珍・学園無双外伝
[身長差]
本日の授業も無事終了し、生徒がそれぞれ帰宅した頃。
は、馬超・趙雲・典韋・孫権・周泰・孫尚香・小喬達と教室でダベっていた。
「え〜!?ちゃんってやっぱりそれぐらいあったんだ〜!」
「あれ?言ってなかったっけ?」
小喬が驚いているのは、の背の高さ。
皆で集まって喋っている内に、の身長がどれぐらいなのか、という話題になったのだ。
たかが身長の話だけで何をそれだけ驚けるのかが謎だが、はそんな小喬を見て、他の男達と顔を見合わせ苦笑した。
「んな驚く事じゃねぇだろ?」
「だって〜!聞いてなかったも〜ん!」
典韋が椅子に片膝を立てながら言うが、小喬は『聞いてないの私だけ〜?』とばかりに唇を尖らせた。
「は女性にしては大きい方ですからね」
「そうだな」
趙雲、馬超も二人で顔を見合わせて、未だにプリプリとしている小喬を見ながら頷き合った。
「しかし、祝融先生が一番大きいのではないか?」
「………………そうですね」
その輪に孫権と周泰が加わる。
「祝融先生はぁ!確か173ぐらいあるんだよね〜?」
「良く知ってるわね……」
得意げにエッヘンと胸を張って言う小喬に、今度は尚香が苦笑する。
「確か諸葛殿の彼女の……月英殿と言ったか?」
「………………えぇ」
ふむ、と考え次に孫権が出した名は、諸葛亮の彼女の月英。
孫権は月英の名前がうろ覚えだった様で、周泰に視線を向けて確認する。
周泰が小さく頷くと、その言葉を繋ぐ様に、の隣に座っていた趙雲が口元に手を当てて呟いた。
「あぁ、確かに月英殿も大きいですね」
「月英さんって、あたしと目線一緒だったから、多分同じだと思うよ?」
と、が机に肘を付きながら孫権を見遣った。
「そう考えると小喬は子供並みだな」
「何ソレ〜!?」
「あはは!それは言えてるわね」
馬超がニヤッと笑いながら言った一言に、小喬がムッと反応をし、尚香が大笑いを始める。
「小喬って160しかないんでしょ?プッ……よくよく考えると小さいわよね!」
「尚香ちゃんヒド〜イ!!」
更に調子に乗ってからかい始める尚香に、小喬がバカ〜!と手を振り上げながらポカポカと叩く。
「え〜!でもでも、小さい方が可愛いじゃんよ?」
「えっ?でしょでしょ〜?だよね〜!」
「立ち直り早いわよ、小喬!」
の言ったたったの一言で小喬は立ち直り、尚香はつまらなさそうに腕を組んだ。
多分、このネタでもう10分くらいは、小喬をからかうつもりだったらしい。
「どうでも良いけど、権兄様は男の中では平均身長よね」
「どうでも良いのか………」
本当にどうでも良さそうに呟いた妹の一言が、兄孫権にダメージを与える。
「、権兄様の隣に立ってみてくれる?」
「うん、いいよ?」
何かを思いついたのか、尚香がを孫権の隣に立たせる。
「あ、もうちょっとくっついてくれる?」
「これで良い?」
「そうよ!それよ!」
「ちょっ……くっつき過ぎではないか?」
指事通りにピッタリと孫権に寄り添う様に立ったに、妹尚香は満足そうに手を叩き、密着状態に焦ったのか兄孫権が顔を赤くする。
「うん!……………兄様幸せ?」
「んなっ!?」
「え?何ナニ?」
尚香がさり気なく近付いて耳打ちすると、孫権は更に顔を赤くさせた。
は聞き取れなかったらしく、無邪気な顔で首を傾げている。
「………………………」
「………………………」
ここで面白くなかったのは、Tの兄貴″を自称している馬超と趙雲。
まるで周泰が三人になった様だ。
二人は、これが尚香のイタズラと分かっていたが、その怒りは罠にハマった孫権へ移行しようとしていた。
「あら?どうしたの二人共?顔が恐いわよ?」
「気にするな。元々こういう顔だ」
「顔面神経痛でしょうかね」
クスッと面白そうに微笑む尚香の質問を、馬超がムッとしながらかわし、趙雲は黒さを秘めた笑顔で誤魔化す。
「やーね!冗談じゃないの」
「面白がっているだろう?」
「そんな事ないわよ?」
ジロリと睨んだ馬超の肩を叩きながら、尚香は「もういいわよ?ありがとう」と言ってと孫権を離した。
「俺と子龍と典は対して変わらんぞ」
「えっ?」
孫権の傍を離れて元の位置(趙雲と馬超の間)に戻って来たに、馬超が顔を向ける。
「何で分かったの?」
「お前が考えそうな事は大体分かる」
は、何故次に馬超達の話題に移るのが分かるのかと不思議そうだったが、馬超がニッと笑いながら言うと、ムッと唇を尖らせた。
「馬ッチ。お前はエスパーか!」
「。もっと女の子らしい言葉遣いを……」
横目で馬超を睨みながらの一言を、趙雲に訂正される。
「女の子らしいなんて、あたしに似合わないよ子龍兄。こっちのがあたしらしくて良いよねー?」
「そうだよ〜!」
「だからその言葉遣いが似合うのよ」
が小喬・尚香に援軍を頼むと、彼女達はすぐに賛同してくれた。
「ガサツとも言うな」
「っ………うるさい!馬鹿ッチ!」
「なっ!?馬鹿ッチだと!」
「お馬鹿ッチのがお気に召したかしら〜ん?」
「………お前っ!!」
「まぁまぁ」
馬超とがまた喧嘩になりそうになる所を、趙雲が慌てて止めに入る。
いい加減慣れたのか、睨み合う二人の間に割って入った。
「喧嘩する程仲が良いってか?」
「羨ましい限りだ」
「おっ?意味有り気な一言だなぁオイ!」
「……………………フッ」
「た、泰!!」
と馬超の喧嘩を見ながら典韋が笑うと、孫権が心から羨ましそうに呟く。
それに反応する典韋に、更に思い出し笑いでもしたのか周泰が笑うと、孫権が真っ赤になって「言うなよ!」と何やら釘を刺した。
「つーか、そっから連鎖的に考えると、周さんっておっきいよね?」
「どういう連鎖だ」
「……………………」
趙雲の介入により喧嘩も終わり、ふとが周泰を見上げながらポツリと言うと、咄嗟に馬超の突っ込みが入る。
見られた周泰は『今度は俺か……』と、無言でサッと目を逸らした。
「だってさぁ。………ちょっと周さん立ってくれる?」
「………………………これでいいか?」
が立ち上がって周泰の傍に寄り、彼を立たせる。
「ホラ!こんなに身長差がぁ!!」
「泰が大き過ぎるだけではないか?」
「……………………」
ビョ〜ンとが腕を伸ばして、周泰と自分の身長差を比較しながら言うも、孫権の的確過ぎるツッコミが更に周泰を無言にさせた。
「んでんで。小喬ちゃんコッチ来て」
「うん、いいよ〜?」
と今度は小喬を呼んで、彼女を周泰の隣に立たせる。
「でね、今度はあたしがこの二人の間に入ると………」
「あーーーー!分かったわ!!」
その行動だけでが何をしたいのかが分かったらしく、尚香が大声を上げる。
「ケータイの電波でしょ、ソレ!!」
「せーかい!尚香ちゃん頭良いじゃ〜ん!!」
「当たり前じゃない!」
勢い良く指を差しながら尚香が言うと、嬉しそうにがそれを褒める。
褒められた尚香は、両腕を腰にやりながら、得意げに鼻をフンと鳴らした。
『く………くだらない……………』
残された男性陣は、ハシャぐ女性陣を見ながらも、意見は全員一致だった。
「………………………………フッ」
ただそこで、周泰は何故かツボに入ってしまったらしく、一人声を殺して笑っていた。