珍・学園無双外伝
[オンナノコの日/1]
「ぐっ、うぅ…………」
本日、晴天。
爽やかな日射しとは裏腹に、部屋の中では重苦しい声が上がる。
けだるそうに、のそりとベッドから体を起こしたのは、。
彼女はまだ完璧に目が覚めていないのか、眉を寄せながら部屋を見回した。
「っつ………イテテ」
と、急にお腹を抑えて更に眉を寄せる。
その痛みに一つ心当たりがあったので、毛布を捲り上げてみると、やはりシーツは赤く染まっていた。
「っくぅ。マジかよ…………チッ」
ハアァと溜め息を吐き、今起こっている現状に舌打ちをしつつ、彼女は携帯電話を手に取った。
「お〜っす!孟起!」
「オッス!」
「おう」
登校チャイムぎりぎりに教室に入って来たのは馬超。
それにいち早く気付いた孫策がニカッと笑って声をかけ、一緒に居た典韋もそれに続いた。
馬超はそれを仏頂面(本人は別にそんなつもりはない)で返す。
「…………………………」
馬超がふと辺りを見回す。
「ん?何だ〜どした〜?」
「孟起、どうした?」
その馬超の行動に、孫策・典韋はなんだ?と互いに顔を見合わせる。
「………はどうした?」
「?あ〜そういや今日はまだ来てね〜な〜」
「風邪でも引いたんじゃねぇか?」
馬超の言葉で『あぁの事か』と納得がいった二人は、連絡は来てないと首を振った。
「メールも来てないのか?」
「電話もメールも来てないぜ〜」
「つーかお前か子龍辺りに連絡するんじゃねぇか?」
典韋が暗に『が休む時、教員以外に連絡する人間は馬超か趙雲ではないか?』と言った事に対し、馬超はちょっぴり嬉しかったのか、口の端を上げる。
だがしかし、と携帯をチェックしてみるが、メールどころか着信履歴も何もない。
「………とすれば子龍の方か?」
顎に手を当てて床を見つめながら、なんとなく核心を持つ。
「ん?どこ行くんだ〜?」
「二学年に行って来る」
「あぁ?出席どうすんだ!?」
「トイレに行ったとでも言っといてくれ」
孫策と典韋にそれだけ言い残すと、馬超はずかずかと教室を出て行った。
「から何かメールは来たか?」
「いや?」
「ならば電話は?」
趙雲にメールを送り、二学年の教室近くのトイレに呼び出し、早速問いつめる馬超。
いきなり質問攻めにあった趙雲は、馬超の原因不明な行動に首を傾げつつ質問に答えていたが、彼の深刻そうな表情を読み取ったのか、逆に質問する。
「来ていないが………どうしたんだ?」
「がまだ教室に来ていない」
「……………何?」
「誰かに連絡がいっていると思ったんだが……俺にも伯符にも典にも来ていない」
「っ!?どういう事だ!!」
の話だと分かると、急に趙雲の顔色が豹変した。
それまではいつもの冷静沈着な男前(コレ重要)趙雲が、たったそれだけで。
「私がついていながら………何と言う事だ!」
「ちょっ……子龍落ち着け」
興奮し出す趙雲に、内心少し引きながら宥める馬超。
「くっ……これが落ち着いていられるか!!誰だ、誰がをさらった!?」
「なんで拉致されてるのが前提なんだ?」
いい加減ウザくなったのか、馬超が溜め息をつく。
「取りあえず本当マジ落ち着け。そんな状態のお前を見て、はどう思う?」
「hっ!?………………す、済まない」
ようやく趙雲が我に帰り、落ち着きを取り戻す。
それを機に、馬超が趙雲の『は拉致された』の誤解を解く為に、口を開いた。
「いいか?まず言っておくが拉致じゃない。お前最近妄想酷いぞ」
「あ、あぁ……済まない」
ズバリ痛い所を一突きされて、趙雲は苦笑いする。
「それと、こんな所で興奮するな」
「あぁ……」
馬超が『男子トイレで大声出すな。教員に気付かれる』と遠回しに言うと、趙雲はすぐに声を潜める。
「まぁ、俺もクラスの奴等に聞いてみる。だからお前も……」
「あぁ。私も色々と探ってみよう」
「頼むぞ?」
「孟起も宜しく」
互いに『じゃあまた後で』と視線を交わすと、趙雲は二学年の教室へ。
馬超は趙雲が教室に入るのを見送って、一学年の教室へと戻って行った。