[始まり]



 つまらない

 つまらない



 つまらなくて 涙が出そう…



 つまらない

 つまらなくて…

 でも何がつまらないのか分からなくて 考える



 つまらないよ

 つまらないんだ

 そう………



 『全てが』



 私が生きているこの世界ほど つまらないものはないと思う

 この下らない世界は 朝 昼 夜 と時間を流すだけで

 このちっぽけな世界は 何も変わらぬ日々を 私に与える



 この世界は 様々な物がありふれていて

 その中で 何になりたいか どう生きたいかという『夢』があっても

 あったとしても



 それになれたか なれなかったか

 叶えたか 叶えられなかったか

 ただ それだけの違い



 遂げても 遂げられなくても

 同じように夢を 『次』を見つけて 繰り返す



 平穏 という名ばかりの時間

 山も谷もない日常

 終わることがないそれは まるで『円』を描くように・・・



 でも そう思うことすら つまらない

 つまらないから

 『つまらない』と考える自分も嫌だから



 何も 考えたくない



 でも 何かを忘れてしまっている気がした

 ずっと ずっと 生まれる前から忘れ続けている気がした

 見えない場所に立ち 見えない何かがずっと自分に呼びかけている

 ぽっかりと心に空いたままの この焦燥感



 ────  ────



 誰かに 呼ばれた

 誰かが 私を呼んでいた

 お前は 誰?



 つまらないと思う度 こうして語りかけてくる 『声』

 それが頭の中に響くようになったのは いつからだっただろう?



 当時 私は それに恐れを抱いた



 誰にも聞こえないそれに 頭がおかしくなったのかと

 私だけに響く 誰とも判別のつかない声

 それが優しさに満ちているものだと感じたのは 沢山の時が流れてから



 声は 私の名を呼ぶだけだった



 日を増し 私の焦りに呼応するように

 それは躍動し 意識を持ち始めた

 そう感じるようになったのは そう遠い昔の話ではない



 ────  ────



 「誰?誰なの…?」



 今や はっきりと意思を表し始めたその声に 私は初めて言葉を返した

 唇が戦慄き 全身が震える

 こんなに鮮明に聞こえたのは 初めてだった



 ────  ────



 ゆるりゆるりと近づくそれは 私のすぐ傍にいる気がした

 それと同時に 頭痛と耳鳴り

 痛みに耐える為に歯を食いしばるも 耐え切れずに目を閉じてしまう

 ぐらり と目眩

 次には意識が朦朧としはじめ 何も考えられなくなっていく



 交錯する世界・・・音・・・・『未来』への旋律



 求めるように浮かび上がり 言葉として脳裏に刻んでゆく

 哀願と渇望と そして・・・・・戒めの声



 ────  百万世界が一つ その世界を捨てて 私の元に ────



 暖かい光に包まれた 気がした

 自分に宿る優しさも 悲しみも 苦しみも 喜びも

 全て この光が飲み込んでくれれば良いと