「これ、記念だからずっと忘れないで持っててね?」
「えぇ。あなたも……ずっと持っていて下さいね?」
「うん。これでいつも一緒だね!」
「私達はずっと一緒ですよ……」
けれどその約束は……何者かの手により、一瞬で壊された。
珍・学園無双外伝
〜 PU RI KU RA・1 〜
「っ………!!」
朝。
趙雲はその夢の中で呼んだ女性の名前で、目を覚ました。
勢い良く起き上がるがそれが夢であったのだと分かると、覚醒を促す様に額に手をやり頭を振る。
顔もそうだが体中が汗ばんでいる事が、夢見の悪さを物語っていた。
「夢か……。だが何故…………?」
呟きながら窓の外に目をやる。
今日は快晴の様で雲一つなく、朝日がとても眩しかった。
ふと下に見える花壇に目をやると、そこにはこの季節特有の花がチラリチラリと見えた。
「あぁ、そうか。もうこんな季節なんだな………」
窓を開けて空気の入れ替えながら、彼はその花を眺めた。
「あなたが……逝った…………季節でしたね」
そう言って、フラつく体を支えながら、彼はバスルームへと消えて行った。
「おはよ〜!」
「お〜〜!遅いぜ〜」
「ウッス!」
「おはよう、」
8:30ギリギリに慌てて教室に入って来たのは趙雲の最愛の義妹・。
と言っても家族ではない。
義兄妹の契りを交わした間柄、というものである。
そんな彼女は相当慌てていた様で、寝癖も直しているヒマもなかったらしく、唯一眉毛だけは書いて来れた様子。
必死に寝癖を直しながら、自分の机に鞄を置いて孫策・典韋・趙雲の居る方へと駆け寄って来た。
「起きたら8:00でさ〜。寝坊しそうだったよー」
と彼女は笑いながら、服の裾をパシパシ叩いた。
ふとが「あれっ?」という顔をして、いつも居るはずの男が居ない事に気付く。
「ねぇ。馬ッチは?」
「あ〜何か具合悪いみたいだぜ〜?」
「どしたんだろ?」
彼女はいつもなら彼等のど真ん中で偉そうに座っている馬超が居ない事に、少し物足りない様だった。
心配しているのか口元に手をやり、う〜んと唸っている。
「風邪でも引いたのかな?」
「バカは風邪引かないって言うぜ〜?」
「伯符に言われちまったら、孟起も浮かばれねぇな」
馬超の容体を伺う彼女に孫策がヘラリと言い、それに対して典韋が苦笑しながら突っ込む。
趙雲はそんな3人の様子を眺めながら、眉を潜めて視線を落とした。
『まさか……孟起もか………?』
そんな偶然があるワケがないと思いながら「少し孟起の様子を見て来ます」と言って教室を足早に出て行く。
「子龍兄!?授業はー?」
そう言ったの声も、彼には届かなかった。
自分のクラスに戻る事もなく、鞄も置きっ放しの状態で馬超の部屋へと向かう。
ロビーで曹丕に「授業は?」と聞かれたが、彼はすぐに趙雲の様子がおかしい事に気付いたらい。
いつもの趙雲とは違う。
顔色が悪く、いつも見せる冷静で、そして馬超とは違った彼らしいT余裕″がない。
曹丕は、薄く笑んだ彼に口をつぐみ、それからは何も言わずに只彼が階段を上がって行くのを見送った。
「どうしたんだ?」
部屋に着くなり、馬超に言われる。
彼も会った瞬間に趙雲の様子がおかしい事に気付き、顔を顰めながらも心配そうに見つめた。
「とりあえず……座れ」
「あぁ、すまない」
馬超に促されて、適当に腰をかける。
「何があったんだ?」
「孟起。夢を……見なかったか?」
「夢?」
馬超は趙雲の微妙に遠回しな言い方に、少し引っ掛かりを覚える。
「夢がどうかしたのか?」
「いや……見てないのなら別に良いんだ」
「子龍?」
その言葉を否定の意味で取った趙雲は、すぐに立ち上がり部屋を出て行こうとする。
それで彼が何を言いたかったのかが察知したらしく、すかさず馬超が止めた。
「待て子龍」
「………………何だ?」
「……か?」
「っ!?」
ズバリ言い当てられて、趙雲は絶句する。
「図星か」
「……孟起には適わないな」
「当たり前だろう?」
ふんっと横を向き、いつもの様に鼻を鳴らしながらも、馬超は妹の話だと分かると少し悲しそうな顔をした。
「孟起は……見なかったのだろう?」
「俺は只の二日酔いで欠席だ」
「………そうか」
それきり趙雲は口を閉じる。
馬超も暫くは閉口していたが、思いきって口を開いた。
「どんな夢だった?」
そう聞かれて趙雲は少し戸惑ったが、親友の寂しげな表情を見て、ポツリポツリと内容を話し出した。



