あの頃
 私はまだ 少年でした

 あの頃
 私はあなたに 恋をしていました

 あなたと過ごした あの日々は 全てが鮮やかに彩られていました

 あなたと交わした あの日の約束は 永久に忘れる事はないでしょう

 あの頃
 私は必ず あなたを幸せにすると 決めていました

 あの頃
 この幸せは ずっと続くものだと 思っていました


 だけどあの日………

 私は あなたを守る事すら 出来ませんでした…………






珍・学園無双外伝
 
 〜 PU RI KU RA・2 〜






「子龍兄大丈夫かな?」



一時間目の授業が終わり、教科担当の先生が教室を出て行く。

先程、顔色を悪くしながら馬超の部屋へと向かった趙雲を心配して、が孫策・典韋へ聞いた。



「さぁな〜?よく分かんねぇぜ……」

「つーか何で孟起、休んでんだ?」

「メールで『二日酔いだから休む』っつってたぜ〜」

「ふ〜ん……」



馬超の休みの原因は孫策のこの一言で解明したが、何故趙雲があれ程顔を青くしながら彼の元へ行ったのかが、気にかかった。

確かに馬超は飲む事が好きだ。

留年三人衆と趙雲、そしてを巻き込んで飲みに行くというのはいつもの事。



だが、何故かこの所、度が過ぎている様に思うフシがある。

彼が酔っぱらって潰れる、というのはの中でイメージになかったが、最近ヤケにそれが多い。

いつもなら皆でワイワイ騒いでT楽しいお酒″であるはずが、彼の目はどこか遠くへと向いている。

挙げ句、酔いつぶれては典韋に担がれて部屋に送ってもらう、という事がここ数日、彼の日課になりつつもある。



これだけなら『ストレスでも溜まってんのかな?』と思うだけで済むのだが、それに趙雲が加わるとそうも思っていられなくなる。

馬超の様に酔いつぶれて運ばれる、というのは流石にないが、彼同様に話もそっちのけで、目がどこか遠くを見つめている。



まるで、求めても……もう会えない誰かを探すように………。



「子龍兄までどうしちゃったんだろ……」



そこで心配そうにフゥと溜め息を付くを気にかけたのか、典韋が話題を変えようと口を開いた。



「そういや近くに新しいゲーセンが出来たみてぇだけどよ?」

「お〜!マジか?行くっきゃないぜ〜!」



お前がその話題に飛びついてどうすんだ!と、典韋はノリノリの孫策に心で突っ込みを入れつつ、の反応を待つ。

と言えばう〜んと唸っているだけで、心ここにあらずといった感じだ。



?おめぇ聞いてんのか?」

「へっ?なに?」

「典〜聞いてないぜ〜?」



典韋は、の頭を軽く頭を小突きながら顔を覗き込むが、彼女は考えに没頭し過ぎていたせいか、ハッと顔を上げて首を傾げた。

それに笑いながらツッコミを入れる孫策を横目に、典韋はの頭をガシガシと撫でつつ、目を合わせながら再度聞く。



「だからよ。近場にゲーセン出来たから、皆でどうだ?って聞いたんだよ」

「え、あぁ。そっか……どうしよ?」



典韋に真顔で見つめられた事に少し動揺する。

には、典韋が真顔で何かを言って来る時はマジトークをする時か、自分を心配している時だと言うのが分かっていた。

心配をかけてしまったと反省しながらも、動揺を表に出さず孫策へと意見を求める。

もちろん、孫策はニィッと笑いながらガッツポーズを組んだ。



「T新しい″って聞いたら、行くっきゃねぇだろ〜!」

「おうよ!仲良い奴等捕まえて来いや!」

「うん、そだね……」



典韋に心配をかけていると分かっているが、何か釈然としない面持ちのままの

それに気付かず、孫策はそのまま「じゃ、権達も呼んで来るぜ〜!」と言って駆け足で教室を出て行った。

さすがに典韋は、彼女の返事の中にある心配に気付き、いつもとは正反対に、の頭を優しく撫でる。



「まぁ、心配する気持ちも分かっけどよ……。お前の明るさで、あいつら笑わしてやってくれや?」

「典ちゃん……ありがとう」



典韋の遠回しな優しさに、は少し涙腺が弱くなった。