[犬猿のなか?]






、何をしている?」

「あ、馬ッチ。今タイプの男について小喬ちゃんと白熱した議論をね…」

「む?馬超ではないか」

「!?曹操!!それに夏侯惇か」



馬超の存在に気付いたのか、曹操が会話に入る。



「ほう?その背の高い女はお主の連れか」

「貴様には関係ない!」



お互いに睨み合っている所を見ると、仲が悪いのは一目瞭然だった。



に何の用だ?曹…」

「ふん、わしが用があるのは小喬だ。が、なるほど。お主はと言うのか」



再び一人を舐める様に見遣った。

その行為に腹が立ったのか、の名を教えてしまった自分を迂闊と思ったのか。

馬超はの肩を抱き曹操を更に睨み付けた。しかし曹操はニヤニヤと笑っている。



「ふん。行くぞ…」

「あ、うん。小喬ちゃんも行こ!」

「うん!!」



先程の曹操の視線が気になっていた為、小喬も一緒に退却させる。



「…体良く逃げられたな」



夏侯惇が苦笑すると、曹操が鼻を鳴らした。



「今日は別に構わぬ。顔を確認しようとしたまでの事よ」

「お前の趣味には付き合っておれん」

「そういうお主こそ背の高い女子から熱烈に見つめられておったではないか。…とか言ったか」

「………………」



今度は曹操が意地悪くほくそ笑んだが、夏侯惇はそれを無言で返すと踵を返した。



「俺はお前と違ってロリコンではないのでな」



と曹操を皮肉って、ずかずかと歩き出す。



「…ふむ。小喬よりはずっと年上に見られたが…」



そう一人思い返し、曹操も同じくして夏侯惇の後を追った。










「いいか!?二度とあいつらには近付くなよ?」



教室に戻り開口一番に馬超が言った。

もとより自分から曹操達に近付いたワケではなかっただが、取りあえず質問する。



「んー…なんで?」



気にかけてくれてるというのは分かっていても、先程の馬超は尋常ではない。

曹操との仲が悪いというのは先程の睨み合いで理解したが、何故自分にそれを押し付けるのかがには分からなかった。



「駄目なものは駄目だ!」

「そんな理由じゃ聞けないなぁ…」



『あたしは曹さんじゃなくて元譲様に近付きたいのにー』と思いながら駄々っ子馬超から離れて、孫策達の所へと戻る。



!!俺は真面目に言っているんだ!」



座ったの肩を掴み、自分の方へと振り向かせる。



「理由もなく駄目ダメ言われてたらこっちだって嫌んなるよ」

「またケンカか〜?」

「よくやるな、お前ら」



我侭馬超の発動を目にして喧嘩かと思ったのか、孫策と典韋が割り込んできた。



「曹がに声をかけて来たんだ」



むすっとした表情を全面に出して、馬超はそっぽを向いた。



「あのチョビの事だよね?曹さんって」

「そうだ。それにあいつなんかにTさん″付けしなくてもいい」

「あのおじさんのどこがそんなに嫌なの?」



も彼の舐める視線には流石に警戒心を抱いたが、取りあえず馬超の言い分を聞いてみたいと思った。



「全てだ」



即答されて一瞬呆気に取られたへ、孫策と典韋も畳み掛けた。



〜。曹には近付かない方が良いぜ〜。タラシだぜ〜」

「殿も相変わらず癖が悪ぃな…」

「そういう事だ。あいつは女タラシで色魔でロリコン野郎の変態だ。分かったか

「曹さんって可哀想…」



確かにとしてもT女タラシ″という台詞には眉を釣り上げたが、三人衆のあまりの言い様に同情を口にせざるをえなかった。

そんな彼女に諦めた様に馬超が口を開いた。



「あいつはタラシはタラシでも、女なら誰でも良いって男だからだ。幼女からノーマルから熟女まで何でも来いの色魔人だ」

「は?」

「要するに、お前も狙われる可能性がなきにしもあらずだと言っている」



ジトっと見てくる馬超に、はふいに笑いだした。



「なんだぁ!そんな事?」

「そんな事とはなんだ!?あいつの良く動く舌で口説かれたらお前なんか一発だと言っているんだ!!」

「だって真面目な顔で近付くなとか言ってくるから、てっきり指名手配でもされてるのかと…」

「似たようなものだが、とにかく奴には近付くな!」



似たようなものって…。前科持ちなのかな、と思いながらもは「分かった」と頷いた。



「曹の奴、大喬も狙ってるからな〜。ウザいぜ〜」

「ぷっ!大喬ちゃん狙われてんだ?」

「殿は好色だからなぁ…」

「あ。じゃあ小喬ちゃんが大喬ちゃんの妹だって事知ってたのかな?」

「…だろうな」



笑顔でウザいと言う孫策に吹き出した。典韋は困ったような顔をしているし、馬超は頬杖をついてどうでも良さそうに相槌を打った。



「ねぇ、馬ッチ。ちなみに曹さんはあたしじゃなくて、小喬ちゃんに話し掛けてたんだよ?私は元譲さんに見愡れてたの!」

「何!?」

「夏侯の事か〜?」

はああいう男が好みなんだな!」

「元譲さん、カッコ良いよね〜!」



イヤンと恥ずかしそうに体をくねらせるに、馬超がすかさず反応した。



「駄目だ!曹なんかとつるんでる奴なんて、どうせロクな男なはずがない!!」

「馬ッチ…父親みたい」

「とにかく駄目だ!!」

「あたしが誰に見とれようとあたしの勝手っしょ」

「うるさい!お前は俺のモノだ!!」

「出たよ、ジャイアニズムが」



溜め息をつきがお手上げのポーズを見せると、馬超は更に憤慨した。



「そろそろ体育館行こうよ」

「そうだな〜」

「おうよ!!」

「俺を無視するな!!」

「しつこい男はモテないよ、馬ッチ」

「俺に口答えをするな!」

「孟起、親父風吹きまくりだな…」

も苦労するぜ〜!」



4人でギャアギャア騒ぎながら廊下に出る。すると品の良いしっとりとした声がかかった。



「廊下で騒いぐのは、よろしくありませんわ」



その声の先を見ると、身体のラインをこれでもかと強調する様な、セクシーな服を見に纏った女性が立っていた。



「え………?」

「あ」

「甄姫先生」

「今日もセクシーだぜ〜!」

「うふふ…ありがとう」



誰?と聞かぬ内に典韋が教員の一人だと告げた。



『うわ〜!!超綺麗…』



が口をあんぐり開けて見つめていると、甄姫は彼女に向かって微笑みかけた。



「走るのもそうですが、騒ぐのもやめましょうね?」

「あ…はい。すみません」



ペコリとが頭を下げる。自分に笑いかけられてると分かり、頬に少し赤みがさした。

男達3人はというと、気まずそうに黙っていた。



「ところでまだ教室には生徒は残っていたかしら?」

「え。あぁ、まだ何人も残ってましたけど…」

「そう。貴女達は早くお行きなさい。私は残りの生徒達を体育館に行くように伝えてくれと祝融先生から言付けられているので…」

「あ、はい。分かりました」



甄姫は再び微笑み、カッカッとヒールを鳴らして4人の横を通り過ぎていった。

歩き去る姿もまた、美しい。



「…美人だねぇ…」



は甄姫の後ろ姿を見ながら、瞳を輝かせながらほうっと溜め息をついた。



「まぁな。だが俺は苦手だ」



意外な馬超の答えだったが、本人は苦い顔をしていた。



「優しくて綺麗な先生だぜ〜!」

「キレると恐いけどな…」



孫策・典韋もそれぞれ印象が違うらしく、己の彼女に対するイメージを語っている。



「美女は何やっても絵になるね〜」

「そうか?」

「選ぶ男も選り取りみどりかなぁ?やっぱ」

「甄姫先生の旦那は丕だぞ?」

「ウソッ!?」



いきなりな余りの衝撃的事実にはショックを隠しきれなかった。

曹丕の奥様は絶世の美女と昨日聞いていたが、まさかそれが甄姫とは思いもしなかったのだ。



「夫婦で学校勤めかぁ…」

「感想はそこか…」

「え、何?」

「…なんでもない」



感覚のズレたの感想に馬超は内心呆れたが、同時に少しホッとした。



「で、丕は曹孟徳の息子だ」

「ヘェ!?」

「色々複雑だが…この学園はそんなモンだ」

「…そ、そう…………」



ある意味ついていけない話だが、いちいち驚くのも疲れるのでとりあえず慣れよう、とは思った。



「と、そうだ。ちなみに体育と音楽と道徳は1.2.3学年合同だ」

「まじ?」

「不満か?」

「ううん。じゃあ子龍兄も一緒って事だよね!超嬉しい!!」



途端にニヤけ出したにTしまった!″と馬超は思ったが、もう遅い。

自ら墓穴を掘るような事を言ってしまった。



「早く行こう!!」

「今日の授業はなんだろな?」

「俺はバスケがやりたいぜ〜!」

「くぅ…!!」



三人が楽しそうな中、馬超一人が悔しそうに歯噛みをして咽を鳴らしていた。