[○○三人衆]





開かれたドアに立っていたのは、スキンヘッドが太陽にキラめく様な筋肉質で強面な大男。

そして、長い髪をポニーテールにして顎に生えているチョビヒゲが印象的な、元気そうな体育会系のあんちゃんの二人組だった。

これまた教員でないという事が分かると、また教室内はザワつき始めた。

二人組は辺りを見回していたが、達の方へと目をやると、ずんずんと歩いて来た。

ガタイの良い男がこちらに向かって歩いて来るので、さすがには『新学期早々、因縁つけられんのかな?』と冷や汗をかいた。



「よぉ!!」



ポニーテールのあんちゃんが、馬超に人懐こい笑顔を向けて挨拶している。

それを受け取って馬超も「おう!」と返したのをのを見て、は『馬超の友達か』と安心した。



『新学期でいきなり因縁もあるわけないか』



そう思ってほっとしていたを見て、ポニーテールは馬超の腕をバシバシと叩きだした。



「何だなんだ?新学期んなって来てみりゃあ!いきなり新しい女か〜?ほどほどにしとかねぇとな〜!」



そう言って、適当にある椅子を馬超の隣に引きずって、満面笑顔で腰を下ろした。

「何言ってんだよ」と言いながら、馬超もニッと笑う。



『へぇ〜、仲良しなんだ。ポニーテールだから…ポニ男だね。んでこっちの筋肉スキンヘッドは…ツル筋』



男達が楽しそうに離しているのを聞き流しながら、が自身の中で勝手にアダ名を決めていた。



「あ?子龍、お前学年違うんじゃねぇのかぁ?」



突然のツル筋の言葉を聞いて、今まで黙って会話を聞いていたがそういえば、と話に混ざる。



「馬超と趙雲さんは二学年だったよね?そういやぁ、そろそろ入学式始まるから、自分の教室戻らなくて良いの?」

「そうだな、そろそろ…」



と趙雲は立ち上がるが、馬超は一向に立ち上がる気配はない。



「んー、馬超は行かないの?」

「バカ。俺達は留年生だ」

「はぁ!?ウソォ?あ、でも分かる気がしなくも…」

「失礼な女だな」

「だが、本当の事だろ?」

「だよね〜!さっすが趙雲さん、大人の意見〜」



またしても趙雲の加勢はへと向けられた。



「孟起。お前はやろうと思えば飛び級だって起こせるだろう?それをやるかやらないかはお前次第だぞ?」



一応のフォローを入れて、趙雲は馬超の肩を叩いた。



「ふん、余計なフォローはいらん」



そっぽを向いて、再び拗ねてしまった相棒に「やれやれ…」と大袈裟に肩を落としてみせ、趙雲はドアを開けて出ていった。



「あ!ちなみに俺は孫伯符ってんだ!孫策 伯符!!よろしくな!!」

「おれは典韋だ!」



とポニ男よろしく孫策と、ツル筋よろしく典韋が自己紹介をする。



「あっ、あたしは。よろしく〜!」



は手を差し出した。

孫策は躊躇いなくにぎにぎするが、典韋は何故か握手をするのを戸惑っている。



「えっ、何?握手苦手なの?」

「こいつ、シャイなんだよな〜」

「ばっ!んな事言うなよ、こんなとこで!!」



差し出したの手を握らないのは、ただ単に恥ずかしいだけらしい。

それは典韋の顔を見れば一目瞭然で、顔が赤くなっていた。

孫策が悪気もなく本当の事を口にしたので、典韋は更に耳まで真っ赤にして抗議した。



「へー。シャイなんだ?なんか可愛い〜!」

「かっ、可愛いとか言うな!!」

「ははっ!典韋顔が真っ赤だぜ〜?ゆでダコだ〜」



と三人で盛り上がり始めるのを横目に見ながら、一人残された馬超はにポツリと言った。



「って事で、俺等が留年三人衆だ」

「はっ?」



の間抜け声にタメ息を吐き、馬超は尚も言う。



「本来、俺と伯符、それに典韋はお前よりも一学年上なんだよ」

「えぇ!?んじゃあ孫策君と典韋君も、留年生なんだ?」

「仲が良い時点で気づけよ」

「別に勉学だけが全てじゃねぇからな!」

「そうそう」

「俺は体育は得意だぜ〜!」

「俺だって負けねぇ!!」



だんだんと会話内容がメチャクチャになってきた時に、ガラッと勢い良く音を立てて、教員らしき女性が入って来た。

新入生+留年組三人は、一斉に自分達の名の貼ってある机に着席する。

入って来た教員は褐色の肌で銀髪の、ボン・キュッ・ボンと音がする位のナイスバディーな姉さんタイプの女性だった。



「あたしは祝融!あんたらの担任だ!あたしのクラスになったからには、何事も全員燃えていきな!!」



祝融と名乗りを上げた女性教員は、熱い自己紹介を終えるとさっそく出席を取り始める。



「じゃあいくよ!!1番、陸遜!!」

「はい!!」

「良い返事だねぇ!次、2番、小喬!!」

「はぁ〜い!」



こりゃまた随分と熱血教師に当たったもんだ、とが思っていると何かの縁なのか、自分の隣の席に座っていた馬超が小声で話しかけてきた。



「お前、入学式出んのか?」

「は?出るに決まってんじゃん」

「サボっちまえよ」

「何で?一応新入生だし…。馬超は出ないの?」

「アホ!留年生が出てどうすんだ」

「そこ!!喋んならもっとでかい声出しな!!」



と祝融先生の論点の違う注意を受け、二人は話を中断した。



「あとはあんただけだね。11番、!!」

「はい!」



の返事に満足するように頷くと、祝融先生は名簿を勢い良く閉じて、気合いを入れるように声をあげた。



「よし!じゃあ留年組以外は廊下に並びな!!入学式の始まりだよ!熱く燃えていこうじゃないのさ!!」



燃え燃えの担任に続き、ぞくぞくと新入生達は廊下へと出て行った。



「んじゃ、あたしも行って来んねん!」

「おう…」

「頑張って来いよ〜」

「変なのに捕まんなよ!」



と、面白くなさそうにそっぽを向く馬超、楽しそうに手を振る孫策、心配されるキャラかなあたし?と思わせる典韋の言葉に送られて、は新入生の列に加わった。



「それじゃ、行くよ!!」



一同の列は、会場となる体育館へと向けて、移動し始めた。