「何コレ?」
「何って衣装だろ?」
「んなこた分かってるし……」
「気にするな。早く選べ」
[新入生歓迎会/1]
歓迎会の為に一度寮へと帰り馬超・趙雲・姜維と昼飯を食べた後、集合時間の18:00には教室に戻っただったが、担任の祝融先生に通された部屋はとても異様だった。
その部屋は、体育館を1/2にしたぐらいの広さがあり、そこには豪華そうな沢山のチャイナっぽい衣装やら、甲冑やらがずらりと所狭しに並べられていた。
先に行って鍵を開けていたらしい劉備先生が「衣装はそれぞれ好きな物を選びなさい」と笑顔で言っていたが、さすがにもこれには引いた。
「つーかこれ、衣装っつーかコスプレじゃない?」
「そうとも言うな。さぁ選べ」
飾ってあったセクシーで露出度の高そうな感じのチャイナ服を指差して馬超に同意を求めるが、彼は有無を言わさず、「どうでもいいだろそんな事」と言いながら早速衣装を選び始める。
「すげーキラキラなんだけど……」
「中国系の衣装なんて、こんなモノだろう?」
「イメージ違うなぁ……」
馬超はう〜ん、と唸りながらも衣装を見比べている。
邪魔をしては悪いと思いつつも、は素直な質問をした。
「ねぇ、何でこんな衣装着るの?」
「この学園の伝統らしいからな」
「へぇ!?」
伝統でコスプレをする学校があるとは…と驚愕したが、実はとしてみれば、中国服には前から興味を持っていたので、いつの間にかこの機会に是非!との考えに変わり始めた。
『まぁあたしもイベントとか出た事あったし、コスプレ嫌いじゃないから良いんだけどさ……』
なんだかんだでは流されつつも、馬超の後をついて衣装を見て回った。
「あ!ちゃ〜ん!!」
「あれ?小喬ちゃんじゃ〜ん!」
振り返ると、小喬は私服ではなく、だが彼女のイメージぴったりの中国系衣装を纏って、の所へと駆けて来た。
「わぁ、小喬ちゃん超可愛いー!!」
「ホント〜?えへへ〜!」
「こんばんわ、さん」
見ると小喬の後ろには、女の子らしく髪を結い上げて、斜にカットされた青いスカートが印象的なチャイナな衣装を着た大喬。
「あ、大喬ちゃんも可愛い〜!そのスカート凄い似合う〜」
「え!?あ…ありがとうございます!」
「孫君も喜ぶよー」
「もう!さんったら」
服を褒められ、かつ大好きな孫策の話を振られて大喬は頬を赤く染めた。
ふと大喬がの服装をまじまじと見つめて、不思議そうに呟く。
「さんはもうどの衣装を着られるか、決めたんですか?」
その質問に面喰らったは、少し困った顔をしながら答える。
「えっと……あたしはまだ決めてないんだよね〜………」
それを聞いて、二喬がしてやったりと顔を見合わせて笑いあう。
「じゃあ私達が見立てたげる〜!」
「そうね小喬。さん、私達に任せて下さい!」
「え、そう?じゃあお願いしよっかな……」
興味があっても中国の、しかも武将チックな服装のセンスが分からないは、そのまま小喬達に任せようとする。
しかしそれを馬超が止めた。
「待て、こいつは俺が見立てる」
「え?」
「何それ〜?」
馬超の突然の申し出には驚き、小喬は不満を隠せない様だ。
それを見て、馬超はふっと笑う。
「安心しろ。お前達が喜ぶ格好に仕上げてやる」
「ちょ……馬ッチ!?」
言うが早いか、馬超はグイッと強引にを引っ張り、試着室へと連れて行った。
「これを着てみろ」
「へ?うん………」
試着室に入って馬超があつらえる服を待つ。
ようやく、あーでもないこーでもないと時間をたっぷりかけて選ばれた服を、カーテン越しに馬超に渡される。
着方を一通り教えてもらい試着すると、その服は自然と身体にフィットした。
「どうだ?」
「あ、うん。なんかピッタリサイズかも……」
「………開けるぞ?」
シャッとカーテンが開かれる。
が身につけているのは、淡い青を基調としていて、上下共に裾には細かい模様が描かれている衣服。
腰には夜と昼の空が描かれた、ウエストから膝上まである長めの布を、首に巻いているのと同じ淡いピンクの薄絹で縛ってある。
前側には青から白という色合いの生地に、笹の葉の模様が描かれた垂れ布。
そして濃い青系の色で作られ縁取りは全て金色の、重みを感じない胸当てと左側だけの肩当て。
どちらかといえば、女性らしいと言うよりは、男装の武将に近い格好に仕上がった。
馬超と言えば、驚いた様に目を見開いて、の姿をただただ凝視していた。
「……どうかな?」
余りに馬超が驚愕の顔をして見つめて来る為に少し不安になっただが、すぐに次の言葉で笑顔になる。
「……………合格だな」
「マジで!?よっしゃー!!」
合格をもらったが、嬉しそうに飛び跳ねてガッツポーズを作る。
だが、何故か馬超が悲しそうに自分を見つめるので、は不思議に思った。
「馬ッチ…?どしたの?」
「ん……いや」
馬超は何でもない、と手を振る。
そしていつもの余裕の表情に戻っての頭を、頭の装飾が外れない様に撫でた。
「あいつら、一足先に会場に向かったぞ」
「じゃー行こっか!」
「おう!」
「…って馬ッチも着替えないと………」
「そうか。忘れていたな」
ふっと自嘲気味に笑った馬超に気付かず、はクスッと笑う。
「馬ッチらしくないね〜!」
「ふん。……少し待っていろ」
「はいよ〜!!」
そう言って、今度は馬超が衣装を持って、試着室へと入って行った。
「馬ッチOK?」
「おう」
カーテンを開けて出て来た馬超は………………凄い金色だった。
衣服は緑系で統一しているが、甲冑は殆どがティカティカな金色。
はっきり言って目に痛い。
「うぉ!?まぶすぃ〜!!」
「そうか?」
「まばゆいよ、馬ッチ!」
「去年の入学式はもっと輝いていたのだがな……」
どんなにキラついてたんだよ!と心で突っ込みを入れる。
そこへ何を思い立ったか、馬超がに何かを渡す。
「そうだ、お前これを腰に下げて行け」
「これっ………剣じゃん」
「安心しろ、俺は槍を持つ」
見ると馬超は超長い槍を持っていた。
「うわ、アリなのこれ?」
「皆持っている。とにかく行くぞ」
と歩いて行く金馬超を見ながら、も「待って〜!」とスタコラ追いかけた。
会場…と言っても体育館なのだが、二人が到着するともうとっくに始まっていたのか、皆食べたり飲んだりしていた。
「お〜!孟起に、こっちだぜ〜!」
入って来た二人にすぐに気付いた孫策が手を振って、手招きした。
しかしもう酔っているのか、顔が赤い。
「孫君!?うわ、なんかスポーティなんだけど!」
孫策の武将姿を見て、笑いながらは駆け寄った。
「わぁ!典ちゃんも可愛い〜!」
可愛いと言われた典韋は「可愛いって言うな!」と言いながらも、顔を真っ赤にしていた。
「おぉ〜!、似合うぜ〜!!」
「お前らしいカッコだな!」
「そうだろう!!」
孫策と典韋の誉め言葉を、馬超が当たり前だとばかりにふふん!と笑う。
「お?孟起の見立てかよ〜!」
「俺の見立てに狂いがあるはずがないだろう!」
馬超は更に胸をのけぞらせ、得意げに笑った。
「あ〜!ちゃん似合う〜!!」
「本当に、凄く素敵です!」
「期待に答えられただろう?」
輪に加わりを褒める小喬と大喬に、馬超が満足げに言った。
「へへっ、ありがと!」
も満面笑顔でエヘヘ、と照れ笑いをする。
「おや?孟起、やっと御到着ですか」
と、ここへ趙雲が笑顔を称えて現れた。
しかしが馬超の背に隠れて見えなかったのか、趙雲は気付いていない。
ひょっこりと馬超の肩から顔を出し趙雲を見ると、彼も武将の衣装で彼らしい爽やかで男らしい姿を見たが、ほうっと見とれる。
「子龍兄、超カッコ良い!凄い似合う〜!!」
パッと馬超の後から横に飛び出して、趙雲に歓喜の声を上げる。
「あぁ、も来てたんで…………………」
を見た途端、趙雲が固まった。
先程の馬超もそうだが、趙雲もを驚きの表情でジッと見つめている。
「え、何?似合わないかな……?」
馬超だけならまだしも、趙雲にまで同じ態度を取られると、さすがにも異変に気付く。
「子龍兄?」
「いや…何でもない………」
ハッとして我に返った趙雲だが、まだ動揺しているのか目が泳いでいる。
「全くどしたの馬ッチも子龍兄も……。二人して同じ反応じゃん?」
の言った言葉にえっ?と言う顔をして、趙雲が馬超を見遣る。
には分からなかったが、馬超と趙雲は顔を見合わせて、お互いに少し悲しそうな顔をした。
「、凄く似合っていますよ」
「ホント〜に〜?」
「本当です。余りにも似合い過ぎて、見愡れてしまっただけですよ」
「え〜!恥ずかしんだけど!」
趙雲にそう言われただけで物凄く嬉しそうなに、馬超は怒る所か少し切なそうな顔をする。
彼のその表情を読み取って、趙雲が機転をきかせた。
「、飲み物なんですが………」
「あ、どこにあるの?」
「あそこにカウンターがあるでしょう?そこへ行って、ビールとが飲みたいものをもらって来てくれますか?」
「うん、分かった。でも子龍兄カクテル持ってるじゃん?」
「ビールは孟起が………」
「あ、そっか。分かった。行ってくんねん!」
「行ってらっしゃい!」
手を振ってを送り出す趙雲に、馬超がスッと近付いた。
趙雲はしばらくの背を見ていたが、馬超の気配を感じると、ふいに口を開いた。
「お前の仕業か?」
「……………あぁ」
馬超の答えに目を伏せて、彼は溜め息をついた。
「どうしてにあれを着せた?」
「…………興味本意からだ」
「……それだけか?」
「………………………」
馬超は答えない。
「正直……………着せてみて、俺も驚いた」
「合うとは思わなかったと?」
「あぁ。冗談半分で着せたらアレだ」
「………そうか」
それ以上は、互いに何も言わなかった。
言ってしまえば、彼女を介して違う人間を見てしまうし、何より自分達が過去を認められなくなってしまいそうで……。
しかしそう思っていても、中々気持ちは言う事をきかない。
二人は只々懐かしい人を、しかし悲しい過去を思い出す様に、その背を見つめた。



