[契り/3]
「ねぇねぇ、君一人?」
「はい?」
「あ、俺達全然怪しくないから大丈夫!」
「はぁ……?」
「良かったら一緒に遊びに行かねー?」
「え、いやあたし人待ちで……」
「とか言って〜!本当は一人なんでしょ?」
「いや……今あそこの店に行ってるんですけど」
趙雲がアイスを買いに行ってすぐに、は四人組の男達に絡まれた。
絡まれたというか、俗に言うナンパである。
「ねぇ?スッポかして俺等と遊ぼうよ〜」
「いや、だから人を待ってるんで……」
「またまたぁ!大丈夫、何もしないって!」
困った顔をしたに警戒されていると思ったのか、一人の男がポンポンと彼女の肩を叩く。
「いや、何もとかじゃなくて……」
「カラオケなら行く?俺等がおごるからさ〜」
「だから遊ばないって言って……」
「ビリヤードとかはどう?俺上手いよ?」
遠慮がちに断ろうとする彼女を逃すまい、と男達はここぞとばかりに話し掛けた。
内一人はの肩に手を回し始め、ベタベタとくっついている。
「はぁ……子龍兄、早く帰って来ないかなぁ……」
「参ったな……」
趙雲はアイス専門店に行ったは良いがの味の好みが分からなかった。
取りあえず自分の好きなバニラと、馬超が好きなチョコミントを買って先程の交差点を渡る。
チョコミントが食べられないなら、自分のバニラを渡そうという兄貴心である。
ふと、彼はがいる方へと目を向けた。すると……。
「つれなくすんなよな?」
「だからぁ!あたしは人待ってるって何度も……」
「だって全然来ねーじゃん?嘘だって分かってるからさ〜」
「とにかく他を当たって下さい」
「そう言わないでさ〜」
可愛くて可愛くて仕方がない妹分が、ナンパされていた。
この時代、携帯電話などがあるのだから、どこかに移動して「ナンパされたから移動した」とでも言えば、すぐにその場所に迎えに行くのに。
だがそれをせず、彼女は自分を待っている。
そんな可愛くて儚い妹を、どこぞのホースボーン達が無理矢理連れ出そうとしているのだ。
『が……が。くそっ!が嫌がっているではないか!!』
それを見た瞬間、趙雲に魔王がジャンクションする。(珍・学園無双外伝〜化粧と御飯〜内の殺戮方程式より)
『くくく………許さん!』
真っ黒いオーラを放出しながら、趙雲は彼女への道を駆け出した。
「じゃあ行こうぜ!」
「ちょっ……遊ばないって言ってるっしょ!」
いい加減痺れを切らせた男達がの手をグイッと引っ張るが、彼女も負けてはいない。
逆にその手をバシッと叩いてその場所から動こうとしない。
「痛って〜!何すんだコノ……」
「、遅くなった」
「あっ、子龍兄!」
手を叩かれた男が彼女に何かを言う前に、漆黒の兄貴・趙雲の登場だった。
その彼が戻って来た事に安堵したは、ホッとした様に笑顔になる。
「、ほらアイス」
「あ、うん。ありがと!」
「どちらが良いかな?」
「あっ!これミントチョコじゃん?あたしこっちが良い〜!」
「ほら」
「ありがと〜う!」
昼ドラの再現の様に繰り広げられる兄妹の会話。
それを全く無視されてまざまざと見せつけられていた男達は、憤慨した。
「シカトしてんじゃねぇぞコラ!」
「何様だてめぇ!」
とナンパ野郎達がキレ始める。
だが、折角の兄妹水入らずで良い雰囲気をブチ壊された趙雲は、がいたので敢えて笑顔。
しかし目が笑っていない。
それどころか、彼の背後にはモンモンと濃ゆいオーラが立ち篭める。
「あぁ、どちら様で?私の妹が何か?それともこの私に決闘の申し込みですか?」
を後ろに庇いながら、笑顔で男達に問いかける。
何度も言うが、目は笑っていない。
「うっ……」
「くそ……行くぞ」
「覚えてろよ……」
「顔忘れねぇからな!」
そんな趙雲の魔王な睨みですくみ上がってしまったナンパ君達は、捨て台詞を残しながら退散して行った。
しかし、ここでもすくみ上がっているのが一人。
ヒロインのさんである。
彼女は趙雲の背に庇われていたが、余りにも男達がビビっているので『どしたんだろ?』とヒョイと横に回って彼を見てしまった。
まるで魔王。
笑顔はいつもの、大好きな子龍兄。
だが、三度目になるが目が……。
それを見てしまった彼女は、次の日馬超に「子龍兄、黒いかもしれない…」と呟くのだった。