[Girls Ready?]
昼休みに衝撃の告白を受けたは、その放課後、小喬に誘われて家庭科室へと顔を出していた。
室内に入るを待っていたのは、小喬の姉の大喬、そして先日馬超達に教えてもらった孫一家の末っ子、孫尚香。
そして、何故かその兄の孫権が居た。
「あなたがね?初めまして!私は孫尚香!聞いてると思うけど、あそこの権兄様の妹よ!」
「あ、宜しく」
の姿を見つけた途端に尚香はパタパタと彼女へ駆け寄り、軽い自己紹介をしつつ孫権にチラッと視線を遣り、さっと手を差し出した。
もそれに軽く答えて、握手をする。
「さっそくだけど、聞きたい事があるの!」
「へ?」
さぁさぁ!と席につかされると、早速本題とばかりに尚香が目を爛々と輝かせてを見つめる。
「小喬から聞いたわよ!もう!」
「え、何が…………」
「さっきの甘君の事だよ〜!」
自分の事でもないのに、嬉しそうにの腕をバシバシ叩く尚香に圧倒されていると、横から卓に出されたクッキーを摘みながら小喬が楽しそうに話し出す。
「えっ!?小喬ちゃんアレ言っちゃったの!?」
「え〜?口止めとかされてないも〜ん!」
「ウッソ………」
まじかよ、とばかりにが大袈裟に頭を抱え込むと、尚香は更に根掘り葉掘り聞くつもりらしい。
先を促す様に、の肩を突ついた。
「で、どうなの?」
「どうって何が……」
「付き合うの?」
「ブッ!!」
と、この尚香の言葉に反応したのは、先程から珍しく顰めっ面をしてムクれていた孫権。
飲んでいたお茶が、ダイレクトに気管へ入ってしまったらしい。
ゲホゲホと咳き込む彼を見て、小喬は「ウゲッ汚〜い!」と連発し、大喬は「小喬、失礼よ!」と妹を叱り、肉親尚香は「あはは!」と大爆笑する。
唯一だけが「大丈夫!?」と言いながら、彼の背を擦ってやった。
「ゲホッゲホッ……す、済まん」
「うん、大丈夫?」
「あぁ。迷惑をかけた」
孫権が恥ずかしげに頬を赤くし、が添えていた手を手に取った。
まだ水分が気管に残っているのか、時折ケホッと軽く咳き込むが、ふと彼は自分が手に取ったの手を見て、ポツリと呟いた。
「小さいな………」
「んあ?」
今度はまじまじと自分の手を見つめ出す孫権に、アホ丸出しの返事を返す。
「の手は小さいのだな、と」
「そうかな?」
「やはり女性だ」
「それってTでかい″って事を前提としてる?」
「い、いや……そういうワケでは………」
「ふふ……良いよ」
未だに手を見つめている孫権に苦笑すると、ハッと我に帰ったのか、彼はすぐにの手を解放した。
その頬は、自分がやってしまった事に対する恥ずかしさなのか、真っ赤に染まっている。
「あっ!もしかして兄様の………」
「ばっ!?言うな尚香!!」
急に何か閃いたらしい妹の口を、孫権が言わすまいとその大きな掌でガボッと封じた。
「ぼびばびべ、びぃばばぼびびばぶびぼっべ…(もしかして、兄様の気になる人って…)」
「尚香ちゃん、何言ってるか分からないよ」
口を封じられている尚香の言っている事など、誰にも分かるはずもない。
「びぃばば!ばばびばばびぼ!(兄様!放しなさいよ!)」
「何!?腹が痛い?それは大変だ!では早速兄が保健室へ連れて行ってやろう!!」
と、もがく妹を軽々と担ぎ上げ、孫権は「すぐに戻って来る!」と言って保健室へと去って行った。
そこに残されたを始め、大喬と小喬も『良く言ってる事分かるな……』と思った。
「それで結局どうなったの〜?」
微妙な空気が支配する中、唯一何も考えてなさそうな小喬が第一声を放った。
「どうなったって……」
「実は私も聞いてみたいです!」
楽しそうに結果を聞きたがる小喬に困り顔をしていると、今度は大喬までもが参戦した。
女の子トークの開始である。
「別にあたし、付き合うつもりとかないし……」
「えー!?」
「そうなんですか!?」
頬杖を付きクッキーにパクつきながらが言うと、過剰反応とも言える声が上がる。
「だってあたし甘君の事全然知らないし」
「『興覇って呼べ』って言われてなかった〜?」
「そこから聞いてたんだ……」
小喬に突っ込まれて、始めて皆がどこから聞いていたのか分かり、は思わず苦笑いをする。
「興覇もあたしの事知らないっしょ?」
「でも付き合ってから育み合う、と言う手もあるんじゃないですか?」
「それに恨みがあっからなぁ……」
「恨み、ですか?」
「そう」
「どんな恨み〜?」
は小喬に促されて、そのT恨み事・体育授業編″を熱く語った。
「そんな事あったんだ〜?」
「そうだよ!あたしのマジアタック、指差して笑ったんだよアイツ!!」
「クスッ!でも甘さんはそういうキャラですよね」
「権ちゃんだったら絶対に笑わないよ!」
「馬君とか笑いそうだよね〜?」
「趙さんは笑わないと思いますよ!」
そして、いつの間にやら話題は『甘寧の告白事件』から『男達の評価』に変わって行った。
「じゃあまず馬君から行こうよ〜!」
「馬ッチはねぇ………」
「男らしくて素敵な方だと思いますよ?」
大喬が言った言葉に、が大袈裟に凍り付いてみせる。
「え?どうしました?」
「それ、孫君が聞いたらヤキモチ焼いちゃうんじゃない?」
「え、あっ!」
「あ〜〜〜!お姉ちゃん顔真っ赤〜〜!」
「やっ、もう!小喬ったら!」
大喬が耳まで赤く染まれば、小喬がからかう。
はそれを見ながら、一人クスクスと笑った。