[制服で行こう!/1]






ここ、無双学園は普通の学校とは少し違う所が多々ある。

オリエンテーションデーから始まって、新入生歓迎会は学園長の趣味でコスプレ等々。

数え上げればキリがない。



そして、基本的には私服登校OK。むしろ学園長の「私服の方が個性が出るだろう?」との意見が反映されて
いる、何でもアリな学園なのだ。



しかし、真面目組の教員からは「せめて月イチで良いから制服着る日を決めようよ?」との事で、月に一回特

定された日にだけ、制服を着用する制度を設けたのである。

ちなみに、どうでも良いが、生徒達からは『制服デイ(制服Day)』と言われている。










この日、留年組を除く新入生一同は、始めての『制服デイ』。

入学式も私服だったので、一同は実際始めてこの学園の制服を着用する事になる。



も朝からテンションが高く、ハンガーにかけてある制服を見て、ニヤニヤしっぱなしだった。

化粧もバッチシだし、髪型も制服に似合う様に仕上げてある。

あとは制服を着れば、完璧。



「えへへ〜」



さて着替えるか、と制服に手をかけると、ピンポーンと部屋のチャイムを鳴らす音がした。



「誰〜?」

「俺だ」



ガチャッとドアを開けると、そこには着慣れているのか、彼流に制服を着崩した馬超。



「おはよ〜ん!……………おっ?馬ッチかっこ良いじゃん!」

「ふん、当たり前だ」



が大袈裟にリアクションすると、馬超はまんざらでもなさそうにニッと笑う。



「で、何?」

「迎えに来た」

「何で?」

「何となくな……」



馬超は目を逸らしながら、さり気なく会話を終わらせる。

だが実は、趙雲や甘寧がイチ早くの制服姿を見る為に迎えに来るのではないか?と予想した彼。

一番に見るのは誰にも譲れないらしく、こうして珍しくお迎えに上がったのだ。



「へ〜?珍しい………」

「悪いか?」

「ん、別に?」



と、ここでがまだパジャマである事に気付く。



「?まだ着替えてないのか」

「あぁ、今から着替えようと思ってたんよ」

「そうか。待っててやるから早く着替えて来い」

「うん、じゃあ下のロビーで待ってて」

「おう」



そんな馬超の心境など知るはずがないは、『何か裏があるのではないか?』と思ったのだが、特に馬超が何か仕掛けてくる気配はなかったので、「すぐに支度するから〜」と言うと、部屋へ入って行った。










ロビーのソファに凭れながら待つ事、約5分。

トントン、と誰かに肩を叩かれたので馬超がそちらへ振り向くと。



「お〜また〜☆」



が笑顔全開で馬超の頬をプニッと押した。

そんな彼女の行動にガキっぽいと思いつつ立ち上がり、上から下まで丹念に見つめる。



「え………何?」

「………………………」

「な、何なの?」

「………………いや」



馬超の行動に動揺したが訪ねるが、馬超は困った顔をし、目を逸らして腕を組んだ。



「変かな?」

「違う」

「純粋に似合わないとか?」

「いや」

「じゃあ何?」

「………………………………………短くないか?」

「は?」



要するに、馬超はのスカートの丈が短いと言っているのだ。

とすれば、「制服→生足→ルーズソックス」の固定イメージがあったので、素足にルーズソックス履いたスタイルなのだが、馬超からするとそれはある意味目のやり場に困る様だった。

先程の困った顔も、目を逸らす行動も、それが原因しているのだ。



ようやっと、馬超の言いたい事を理解したは一瞬目を丸くしたが、その次には大爆笑し出した。



「ぎゃははは!!何それ〜?」

「な、何が可笑しい?」

「だって〜!馬ッチってミニスカとか生足見慣れてそうな勢いじゃん!」


何がツボったかは分からないが、はただただ爆笑していた。

確かに馬超は女の生足など、見慣れてないワケではない。

だが、自称T俺の妹分″と公言しているがその出で立ちをすると、何故か気恥ずかしくなってしまうのだ。



溺愛する妹が、いきなりイメージにないミニスカで現れたりしたら、あの冷静沈着な趙雲でさえも自分と同じ気持ちになるのだろう、と馬超は思った。

それと同時に彼らしくもない溜め息が漏れる。

すると、未だ爆笑しているに声がかかった。



?」

「いっひ〜ひひひ…………へ?」



見ると、そこにはやはり制服をパリッと真面目風味に着こなした孫権。

彼も馬超と同じ心境らしく、顔を真っ赤にしながらの制服姿をボーッと見つめている。



「あ〜権じゃん!今から登校ですか〜!?」

「あ、あぁ…………」



孫権は何とかの問いに頷くと、更に耳まで赤くしながらツイと目を逸らした。

逸らした途端に馬超と目が合い、無言で『目のやり場に困る』と伝えると、彼もまた『俺も困っている』とばかりに目を逸らされてしまった。

そんな二人のアイコンタクトを交互に見ていたが、どう取ったのか口を尖らせた。



「ちょっと!何その無言の見つめあいは!?似合わないなら似合わないって言えよ!」

「い、いや違…………」

「うっさい!黙れ!!」



アイコンタクトの意味を『似合わない』と取ってしまったは、二人を一瞥する(睨む)と、「馬鹿目が」と誰かさんお得意の台詞を残してさっさと登校してしまった。



「んなっ!?ちょっ……待て!!」

「待ってくれ!」


と、はっと我に帰った馬超と孫権が、慌ててその後を追う。










「権様………………………………」



いつのまに居たのか、ロビーには周泰が一人でポツンと立っていた。

彼は孫権を追って来たのだが、微妙な空気の三人の中に入れず、一部始終を傍観していたのだ。



「…………………………一波乱来るか?」



これから起こる出来事がある程度予測出来たのか、彼はポツリと呟いたが、それはロビーに虚しく掻き消えるのだった。