[制服で行こう!/2]
周泰が一人大波乱の予想をしている時、はそろそろ教室に着く一歩手前だった。
そのすぐ後ろを馬超・孫権が後を追う。
「!待てと言っているだろう!」
「!頼むから待ってくれ!誤解だ!!」
「二人共マジうっせー。廊下は黙って歩けよ!」
後ろからギャンギャン騒いで追っかけて来る二人に一喝すると、は教室の扉を開けた。
教室に入ると、ある一角を目指してズンズンと歩く。
その先には、口を「お」の字に開けて固まっている孫策・先程の孫権と同様に耳まで真っ赤な典韋、そして目を見開いてこちらを唖然と見つめている趙雲。
ちなみに、何故学年が違う趙雲がいるのかと言うと、『の制服姿を早く見たかった』という義妹バカな理由。
「おはよー」
心の中で『皆同じ反応しなくたって良いじゃん………』と思いながら、が珍しく仏頂面で挨拶をする。
その言葉で孫策と典韋は我に帰ったのか、「お〜っす」「よ、よう」と返した。
「…………?子龍兄?」
未だに固まっている趙雲の目の前で手をヒラヒラと振るが、彼には見えていないらしい。
「…………………………………」
「ん?」
やっとの事で絞り出した声が、今の趙雲の心境を物語っていた。
しかしそれに気付かないは、「なに?」とか言っている。
「……………だ」
「んあ?」
聞こえないよ?と耳を趙雲に近付ける。
すると趙雲はやっと正気を取り戻したらしく、いきなりガバッと立ち上がると、大声で大絶叫した。
「何だそのスカートの丈はぁああぁ!!」
その叫びに、クラス一同が一斉に目をやる。
そこには体全体をプルプルと震わせている趙雲と、大声にビビッて体を縮こまらせる。
皆は思わず、趙雲の絶叫からのスカートを見てしまう。
確かに趙雲の言う様に、スカートは膝上20センチと、驚異的な短さだった。
それを見た、純情な部類に入る者達(陸遜とか姜維とか呂蒙辺り)は盛大に鼻血を吹き倒れ、特にそこまでの衝撃でなかった者達(ホウ統とか許チョとか張飛辺り)は、介護組になった。
と、ここで先程に一喝された馬超と孫権が教室に入って来た。
その存在にイチ早く気付いた趙雲が、瞳の奥に紅蓮の炎を燃やしながら、愛槍を手に二人へ踊りかかった。
「はぁあ!!」
「子龍!?」
「んなっ!?」
だが、飛びかかられた馬超・孫権は『何で!?』という顔をしながらも、各々の武器を懐から取り出し、応戦体勢に入る。
「子龍!何で俺等に飛びかかるんだ!?」
「趙殿、一体どうしたのだ!?」
二人はいきなり不可解な行動を取った趙雲に構えながらも、無駄な説得にかかった。
だが趙雲は、一向に『聞く耳は持たん』とばかりに武器を振り回す。
そこへ呆気に取られていたが、趙雲の背中に突進して来た。
「なっ!?、危ないから下がっていなさい!」
と、趙雲が顔だけ後ろを振り返り言うが、は彼の腰をガッチリとホールドしたまま離さない。
「!!」
「教室内での武器の振り回しは禁止だって先生言ってたじゃん!!」
再度一喝するが、逆に禁止事項を上げられては、思わずウッと言葉に詰まる。
「ってゆーか何でいきなり二人に襲い掛かんの!?」
「それは…………」
に問われて思い出したらしく、馬超と孫権の二人をギッと睨みつける。
そして一言。
「どちらだ?にこんな淫らな格好をさせたのは!!」
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『はぁ!?』
クラス全員が、心でそんな事を思う。
先程の趙雲の行動の原因。
それはのスカート丈の短さは、馬超か孫権どちらかが、もしくは二人でに進めたモノだと思い込んでの事だった。
『溺愛する義妹が、自分に相談もなしでこんなに短くするはずがない→ならば誰が!?→今、教室に入って来た馬超か孫権しかない→もしくは二人で!?→なんとふしだらな!!→これは始末しかない!』
趙雲は、この見事な踊る大妄想線で、二人に踊りかかったのだ。
彼からすると、この二人が原因要素と勝手に決めつけて。
だが当の二人からすれば、とんでもない誤解を受けたものだ。
なので、多分自分達が説明しても無理だろうと悟り、無言でに『誤解を解いてくれ』と視線を送る。
は二人の視線に溜め息を吐きながら頷いた。
「あのね、子龍兄……………」
と、一から説明を始めるのだった。