[決闘 〜開戦〜]
宣誓を終え、軍は学園の最東端に本陣を構え、夏侯淵軍は最西端に本陣を構えた。
簡単に言うと、大将であるは『桃の間』と言われる中庭ならぬ裏庭に、夏侯淵は体育館に陣取ったのだ。
軍の正軍師である陸遜、副軍資であるホウ統、そしてパシリの姜維により、彼女のチームメンバー達は、各々指定された位置に着いた。
そして夏侯淵軍も同じく、正軍師司馬懿の元、時たま茶々を入れる諸葛亮に怒声を浴びせながらも、やはり各々に配置を促した。
準備は、整った。
第一次・無双学園大戦の幕開けである。
「おらぁ!気合い入れて行くんだよ!!始め!!!!!!!」
祝融先生の掛け声と共に鳴らされたのは、徒競走などで使われる鉄砲(?)ではなく、ドラ。
ヴァアァ〜ン!!!との音と共に、放送室を使ってのT開始合図″が、全ての教室等に響き渡る。
ちなみに、ここ無双学園は、フルセキュリティと称されるだけあって、校内監視カメラも稼働中。
実況中継には、もってこいな環境だった。
「はっはっは!さて、早速だが、私劉玄徳と」
「私、甄姫が解説をさせて頂きますわ………」
まず解説を始めたのは、学園長劉備先生。
それに、彼に頼み込まれた甄姫先生の声が、マイクを通して全校に流れた。
そして、更には。
「美しい〜〜!」
「張先生!少しは真面目に……っ!!」
多分誰もが『そう言いながら、舞ってんだろうな』と予測出来る、張コウ先生の声。
そしてその横で、いつものごとく、張コウ先生を抑えようとして、けれどそれより先に身体がおかしくなって、吐血寸前であろう周瑜先生の声が、木霊する。
「はっはっは!周先生、まぁ落ち着いて」
「放送室を血まみれにされては、適いませんわ」
「あぁ!!美すぃ〜〜〜〜〜〜!!」
「ぐ………………ぐはっ!?」
放送室からは楽しそうな劉備先生、ため息の終わらない甄姫先生、実況中継など全然しようとも思わないんじゃないか?と思われる張コウ先生。
そして、開戦直後だと言うのに、そろそろ保健室に運ばれそうな周瑜先生の、何かを吐く音が聞こえた。
一方、戦闘開始の合図を聞いた、夏侯淵軍は。
「よっしゃ!!!惇兄とのカラオケの為に、皆頼むぞ!!!」
との大将夏侯淵の掛け声も虚しく、いきなりチーム破滅の危機に陥っていた。
何故か?
それは大将の護衛よりも、一般兵である曹操の護衛(近衛)兵が多かったのである。
関羽は薙刀をブン回し「恩義に報いる!」と豪語しているし、典韋は殿の護衛に恍惚の表情。
そして『うまい棒』に釣られた、痴虎許チョは、「腹が減っただ〜!」と五月蝿い。
司馬懿は司馬懿で、自分の策に多大な自信があるのか、「ふはははははは〜!!」と馬鹿笑いしているし、唯一志願して近衛兵となった諸葛亮も、「ふふ、いかなる鬼道を使いましょうか?」と、何やら怪しげな表情。
そして、大喬の事でいつ旗色を翻すか分からない孫策他、癖のあり過ぎる奴等ばかりだ。
開始早々、夏侯淵は泣きたくなった。
しかし、簡単に『惇兄とカラオケ』を諦められる程、彼は大人ではない。
そして唯一、このチーム内ではTまとも″と呼ばれるのであろう張遼が、彼の肩を叩いた。
「あん?」
「淵殿、どうかお気を確かに!!」
「………俺様の事分かってくれんのは、お前だけだよ」
あくまでT開始早々″と強調するが、しょっぱなから夏侯淵と張遼の間には、人知れず小さな友情が芽生えていた事は、ここに明記しておいた方が、良いのだろう。
張遼は、仲の良い徐晃と共に、夏侯淵の肩を叩き、武器を片手に第一陣、と戦場に繰り出した。
「頼むぜー遼、晃!!」
そう言って手を振った彼の目に、一瞬キラリと何かが輝いた気がしたが、張遼と徐晃は『なんでこんな事で……』という思いを胸に、見なかった事にした。
一方、軍。
「おら、全員配置に付けボケがっ!!もたもたしてっと、顔面に穴あけっぞゴルァ!?」
覚醒してから日も(時間も)浅いはずなのに、どこかがキレてしまったのか、が喝を入れる。
それに近衛兵隊長・趙雲、そして副隊長・馬超が冷や汗をかきながら、『変わり過ぎだろ』と内心突っ込みを入れる。
特攻隊長・甘寧は「流石は俺が惚れただけあるな!」と、の喝に己の頬をパンッと叩いて気合いを入れ、正軍師・陸遜は「クスクスッ!流石はさんです」と、油の塗りたくられた矢筒を肩にかけ、姜維はキャラの変わり過ぎた彼女に顔面蒼白。
小喬や尚香は「頑張ろうね!」と、覚醒を経てT覇王″になりつつあるを気にする事なく、両手を合わせて笑い合い、孫権はそのテンションに当てられたのか、「、なんて勇ましいんだ!」と、ワケ分かんねー涙を流している。
爆弾なら任せい!な黄蓋他、何となく夏侯淵チームよりは、協調性があるかもしれない。
そんな中、大将は、孫権にプレゼントされたギザギザ剣(以下ギザ剣)を一振りし、『大将専用指示マイク』を片手に、力一杯叫んだ。
「全軍突撃!!!狙うは敵大将、棍棒ヒゲの首のみだ!!!」
ちなみに、今回の戦は、大将には『大将専用指示マイク』。
そしてその部下には『大将からの指示を頂きマイク』を装着している。
は、ついでにワイヤレスのイヤホンの調子を確かめつつ、第一陣ならぬ全軍を、一気に送りだした。
そして更についでに、自身も本陣をがら空きにして、馬超を馬と見立て、おぶさって突撃しようとする。
だが、電波仲間の周泰に「…………大将が本陣をがら空きにするのは、良くない」と諌言された為、勢いを削がれつつも断念。
馬超・趙雲の『兄貴コンビ』に「は俺等が守るから、取りあえず妙才の首取って来い」と、軍総出で出動した。
とうとう、と言うか………。
『やっと』戦の幕開けである。
夏侯淵軍第一陣・張遼、徐晃vs軍・大将と近衛兵以外全員の戦い、如何に!?
以下次号。