[決闘 〜in 家庭科室〜]






近衛兵である馬趙コンビと、「喉乾いたー」といきなり駄々を捏ね始めた大将、そして「では私が自販機で買って来ます!」と自らパシって行った姜維以外は、全て戦場に繰り出した。



ではまず、各自配置を説明しておこう。



少々キレたを見て興奮し気味の陸遜を横目に、全然冷静なホウ統が『桃の間』を出てすぐに、各チームずつに配置を割り当てた。

個々に突撃して取り囲まれるより、少数で行動する方が撃破されづらくて良い、と判断した為だ。






[ボルァ!!部隊]
甘寧(特攻隊長)
太史慈(副特攻隊長)

[キャハッ☆部隊]別名・一般兵チーム1
小喬
孫尚香

[キルッ!!部隊]別名・一般兵チーム2
孫権
周泰

[クスッ!!部隊]
陸遜(正軍師)
呂蒙(一般兵)

[ほのぼの部隊]
ホウ統(副軍師)
黄忠(一般兵)

[やらかし部隊]
黄蓋(爆弾兵長)
袁紹(補給拠点兵長)






という二人組づつにした。

ちなみに、黄蓋と袁紹は、部隊を組んではいるものの、個々に移動も可能だ。



黄蓋の役目は、途中で味方にピンチ者がいたら『爆弾を投げて助っ人する』という大役。

そして袁紹は、ピンチ者に『肉マンや骨つき肉を配給する』という、これまた大役。

袁紹自身は初めは「何故この私が、こんなちゃちぃ役を!」と怒ったが、これまた馬陸の二人に「これは貴方(お前)しか出来ない事なんです(だ)」と乗せられ、有頂天になったのだ。



と、言う事で、目のイッてしまっている正軍師殿ではなく、比較的マトモな副軍師により、部隊ごとに散り散りになった。

本当は、大将や近衛兵馬超の言う通り、『とっとと妙才の首取って来い』という命令を実行しなくてはならないが、そんな事を敵も考えていたとしたら、逆に本陣に残されたが危ない。



この学園は広過ぎる為、こちらに来るまでにもあちらに行くまでにも、色々な道がある。

王道ならば、廊下を歩く。

邪道ならば、裏道をかいて、不意打ちや狙いすましを行える。



しかも相手の軍には、あの司馬懿がいる。

一部で噂されているが、多分奴と他ヒゲ(チョビ)が、大喬誘拐を目論んだのでは?との声も上がっている。

そして何よりも、どんなレボリューションを考えているか分からない、諸葛亮。

そして更に質の悪い事に、諸葛亮と張り合えるだけのイリュージョンを繰り広げるであろう、張角。



なんて恐ろしい敵なんだ!



は全く彼等の事を知らないが、誰よりもあの3人が集うと『とんでもない事』になるであろうと予想しているのは、もはやホウ統だけではなかった。

ぶっちゃけ陸遜も、の覇道っぷりに心酔しつつも、心の奥では内心『どうすんべかなー』と試行錯誤していた。



しかし、ある程度の策は姜維にも託して来たし大丈夫でしょ、と何とも楽観的に考えて、矢筒の中にたっぷりと油を注ぎ込んだ。

それを見ながら、やはり比較的マトモな孫権が『恐ろしい……』と冷や汗をかいていたとか。



「さぁ!行くわよー!」

「お〜!」



各自指定された道に別れる。

遠くから全然気合いの入らない女子の掛け声に、何故か太史慈が目眩を覚えた。










一方。



夏侯淵軍第一陣である張遼・徐晃の仲良し組は、王道を取って、普通に廊下を歩いていた。

多分今頃は、第二陣が本陣を後にしているだろう、と考えて。



取りあえず渡り廊下を渡り、のんびりと武器を片手に歩く。

すると、丁度『家庭科室』の前を通りがかった時、前方から二人の人陰が。



「む!?」

「あ、あれは……!」



前方からゆっくりもっさりと歩いて来たのは、孫権・周泰のキルッ!!部隊。(別名・一般兵チーム2)

彼等も張遼と徐晃に気付いたらしく、『王道から歩いて来る奴が、あのチームに居たのか』と、目を丸くしている。



チームキルッ!!は、すかさず小型軽量マイク(別名・大将に『敵発見報告』用マイク)に指をかけ、すかさず「て、敵を発見したのだが……」と、孫権がに連絡を取る。

張徐コンビはすぐに武器を構えたのだが、何故か一向に孫権はイヤホンから漏れる、時折怒鳴り声とも聞き取れる声に慌てた様子で、相手がそこに居るワケでもないのに、ペコペコと頭を下げている。

どうやら、大将に怒られているようだ。



その理由は張徐二人には分からなかったが、孫権と味方同士である周泰は、その会話を聞いてフッと笑っていた。










暫く怒られ続けていた孫権が、げっそりとした様子で会話終了したのは、10分程経ってからだった。

周泰は途中で飽きたのか、耳からイヤホンを抜き、戦線離脱していた。

そして仕方ない、とばかりに軍のキルッ!!部隊が武器を構えたのを合図に、夏侯淵軍第一陣二人も、武器を構えた。



ではまず名乗りを……と武器を振り回したのは、張遼だった。



「我が名は張文遠!!軍の将とお見受けする!!」

「拙者は徐公明と申す!いざ、尋常に勝負!!」



「……………はぁ」

「……………………権様」

「分かっている。私は孫仲謀!この剣にかけて、お前達からを守ってみせる!!!」

「…………………周幼平だ」



なんか本当、何でこんな事………とため息を吐いた孫権に、周泰が視線を送る。

それに頷いてみせ、キルッ!!部隊も名乗りを終えた。



「せぃやぁっ!!」

「そいやっ!!」

「えぃやぁっ!!」

「しゃっ……」



無双学園の家庭科室の前で、張遼・徐晃vs孫権・周泰の『遼来々バトル』が始まった。