[決闘 〜in 桃の間〜]
張遼・徐晃vs孫権・周泰の、『遼来々バトル』が家庭科室で繰り広げられている、一方。
馬鹿みたいに大爆笑していた、夏侯淵軍軍師、司馬懿はようやくこちらの世界に戻って来たようで、いつの間にか居なくなっている張徐コンビを忘れ、早速あれこれと指示を出していた。
「ふはははははははぐっ!?ごほっ!」
「プッ……………司馬殿、笑い過ぎではありませんか?」
「んなっ!?!?!?!!?」
あれやこれやと指示を出し、また己の深謀に浸水して馬鹿笑いをし出した彼に、諸葛亮が口元に扇を当てて、馬鹿にしたように笑う。
それにドタマに来たのか、彼は大声で「諸葛亮!!!何と言った!?」と声を荒げた。
「ふふふ……………司馬殿。己が知に、溺れないように…………」
「なっ!?それはどういう意味だ!!貴様っ!!!」
「ふふふふふうふうふ………」
諸葛亮は意味深な言葉を残すと、「さて………では私はこれで………」と言って、浮いて何処かへ行ってしまった。
それに待ったをかけようとするも、浮いているが故か、だから浮いているのか、移動速度が恐ろしく早い。
司馬懿はふと、以前『新入生歓迎会』で、酔い潰れた陸遜を運んだ時の彼を思い出した。
「諸葛亮め…………侮れぬな」
「おい………」
「っ!?」
憎々しげに舌打ちをしている彼に、後ろから声がかかった。
軍師として『背後に回られる』事を嫌う彼は、反射的に振り向きざま、黒羽扇からビームを出す。
「うおっ!?」
「なんだ貴様は………?」
後ろから声をかけたのは、最近転入して来た、新参者呂布。
彼は、ビームを間一髪でかわした。
対する司馬懿は、誰だお前はという表情。
「貴様………だとっ!?」
「ふっ……貴様を貴様と言って、何が悪い?それとも何か?この私の深謀無しで、この戦に勝てるとでも思っているのか?」
「ちょっ………おいおい、待てよ!!」
貴様呼ばわりされた呂布はブチキレ寸前で、こめかみをピクピクさせている。
それに対し司馬懿は、更に煽るような言葉を吐き、薄ら笑いを浮かべる。
そこへ、大将夏侯淵が割って入った。
「二人とも落ち着けって!」
「貴様………邪魔をするな!!!」
「ふっ………五月蝿い獣めが。私の周りをウロチョロするな」
まぁまぁと宥めても、二人は喧嘩を止めようとしない。
むしろ、司馬懿が呂布をどんどん煽り続ける。
そしてとうとう、呂布がマジギレしだした。
「この青白面が!!!この俺を怒らせて、ただで済むと思うなっ!!!」
「ふん。図体ばかりで、脳みその欠片もない凡愚めが。貴様こそ、この司馬仲達を敵に回して、ただで済むとは思うでないぞ」
「この俺に、脳みそがないだとっ!?貴様こそ無駄にデカい帽子を被りおって、武などからっきしだろう!!」
「何を言うかこの馬鹿目が!!!この私に武がない!?貴様は脳みそ所か、目もその役割を果たしておらんようだな、ふははははははは!!」
ブチッ!!!
「いい加減にしろーーーーー!!!!!!!」
バコッ!バコッ!
仲間内で喧嘩をしだした彼等に、夏侯淵がマジギレした。
彼は持っていた棍棒で、二人に無双乱舞を食らわせる。
そして哀れ。
司馬懿は軍師にも関わらず、呂布は隠し玉にも関わらず。
二人は一気に、敵本陣である『桃の間』の方向へと飛んで行った。
「………ふぅ。ったく………」
そう言いながら、夏侯淵は額に浮かぶ、玉のような暑苦しい汗を一拭いして、他のメンバー達に目を向ける。
そこへ、曹操が彼に声をかけた。
「妙才よ」
「んぁ?」
「わしらは、どこへ行けば良いというのだ?」
「あぁ………」
中々まともな質問をしてくれた曹操に、夏侯淵は「そうだなー」と頬をポリポリ掻きながら、明後日の方向を見る。
そこへ更に、多分この軍で一番マトモな人間だろう、関羽が声をかけた。
「夏侯殿。拙者が思うに、部隊を少数に分けて進めば、良いのではないだろうか?」
「んーぁ。そだな」
ここに司馬懿がいたら、「もっと考えんか馬鹿目が!!」と怒鳴りそうな程、適当に相槌を打つ大将。
だが孝か不幸か、彼は居ない。
司馬懿の次に頭を使う事が得意なのは、何処かへ消えてしまった諸葛亮を除くのなら、この男だろう。
そう思った夏侯淵は、関羽の『ちりぢり作戦』に、賭けてみる事にした。
「よっしゃ!そうと決まったら、さっそく軍を裂くぞ!」
「ふむ。ではここは拙者が…………」
結果。
[恩義!部隊]
曹操・関羽+人質大喬
[護衛してねーじゃん!部隊]
典韋・許チョ
[ヨコ幅!部隊]
孟獲・董卓
[なんか作戦練ってる!部隊]
孫策・貂蝉
[ホゥ・キエェ〜!部隊]
諸葛亮・張角
という素晴らしい部隊。
ちなみに、諸葛亮と張角は、単独行動も可。
理由は言わずもがな、である。
「よーっし!じゃあ頼んだぜ!!!」
夏侯淵の声を合図に、各々が関羽に指示された通りの道を歩き出した。
さてさて一方。
キャハッ☆部隊(小喬・尚香)は、さっそくとんでもない事を、やらかしていた。
なんでも、小喬のケータイに付けていた、お気に入りのストラップを、何処かへ落としてしまったらしい。
それに「アレ気に入ってたのにー!!」と、キーキー五月蝿い小喬。
そして尚香は、「仕方ないわねー」と言いながらも、一緒に探してあげる事にした。
取りあえず今来た道を戻り、『桃の間』なる場所へとUターンする。
すると。
「あれ?」
「ちゃ〜ん?」
「何所行ったのかしら?」
「ね〜?」
先程まで本陣待機していたはずの、が居ない。
それどころか、その護衛役を勤めるはずの、馬超や趙雲も。
一体、何があったのだろうか?
そう考えながら、小喬と尚香が「どうしたんだろう?」と顔を見合わせていると。
「さーん!!ジュース買って来まし…………あれ?」
「あー!姜君だー!!」
「あら、本当だわ!」
姜維が片手に、アクエリ○ス500mlのペットボトルを持って、駆けて来た。
それに小喬が手を振り振り、尚香がその大きな瞳をパチクリさせた。
「あれ?さん達は……………」
「あたしたちが戻って来た時には、居なかったんだよ〜!」
「一体、何所に行ったのかしら?」
何も考えていない小喬とは違い、尚香は内心『パシられたのね』と、姜維を哀れな目で見つめつつ、すぐに視線を逸らした。
「せっかくさんの為に、アクエ○アス買って来たのに…………」
「えー!姜君、パシリじゃ〜ん!!」
「ちょっ………小喬、そう言う事言っちゃダメよ!」
ズバリ指摘してくれやがった小喬に、思わず姜維はヘコんだ。