[決闘〜各個撃破で宜しく!1〜]






『陸遜・呂蒙(気絶)vs曹操・関羽+大喬 in 屋上』の戦いが放送を遂げられて、ようやく残りは大将同士の戦いか………と思いきや。

軍大将である達はもちろんだが、対する夏侯淵軍大将夏侯淵も、なにやらモメていた。



理由を上げるなら。

取りあえず関羽に任せて仲間達を送り出したものの、彼の傍に残るはずの諸葛亮は忽然と姿を消しており、張角もいつの間にか消えていた。



要するに、彼は今本陣に一人取り残されたようなもの。

イコール今敵の襲撃(複数人で)を受ければ、勝ち目がないかもしれない。

先程典韋から『敵発見報告マイク』で得た情報からすれば、どうやら軍もチームを複数に分けて放ったようだ。



なので、もしいきなりどこかの部隊が本陣を狙っていたら、かなりマズい事になる。

一人棍棒を担いでふとそう考えた夏侯淵は、本陣が体育館だった為にひとまず倉庫へ入り、一眠りする事にした。










さて。

ここでキャメラをそれぞれのバトラー達に戻してみよう。

尚、実況中継さながらに、ハイライト状態でパパパーと説明するので、お見逃しなく。



[張遼・徐晃vs孫権・周泰]



張遼「くっ…………孫殿に周殿、中々やりますな!」

徐晃「そうでござるな!しかし、拙者達も負けるわけには行かぬ!」



張遼と徐晃は武器を構え直し、キラリと光る汗を拭う。

対する孫権は、自分を庇い傷だらけの周泰を見て表情が険しくなった。



孫権「大丈夫か泰!?」

周泰「………………お気になさらず………」



そう言いながらも、周泰の腕は刃の付いていない武器の攻撃を受けて、青タンになっている。

自分の腕が足らないばかりに!と、孫権はくぅっと喉を鳴らした。



孫権「済まぬ泰…………私が至らぬばかりに…………」

周泰「…………権様…………だからお気になさらず…………」

孫権「私にもっと剣の腕があったならば………」

周泰「………………………プッ………………!!」



と、周泰がいきなり吹き出した。

彼らしいといえばそうなのだが、口元に手を当てて、顔を背けて。

それに、孫権が張徐から目を話さずに、首を傾げる。



孫権「どうしたのだ?何が可笑し………」

周泰「…………プッ…………………T権″様が…………T剣″………………」

張遼「…………………」

徐晃「…………………」



どうやら、権と剣がツボに入ってしまったらしい。

周泰は大きな身体を小さく屈めて、笑っている姿を見られまいと肩をプルプル震わせた。

彼の笑いのツボヒットにより、孫権ならず敵の張遼と徐晃まで、その場は興ざめた。










[呂布・司馬懿vs孫尚香・小喬・姜維]



尚香「ちょっとぉ!!ガードばっかりしてないで戦いなさいよね!」

小喬「そうだよぉ〜!あたし達だって頑張ったんだから〜!!」

姜維「そ、そんな事言われても…………………うわぁ!?」



桃の間一杯に、姜維に対して尚香と小喬の声援が飛び交う。

だが、何故彼女達が戦わず彼を応援しているのかと言うと。



尚香と小喬は、二人で司馬懿を相手にしていた。

一般論で言うならば、『男一人に女二人でも適うかどうか』。

そう想像する事も容易いが、元々体力がない為か女性陣の猛ラッシュにあった為か。

司馬懿は彼女達にコテンパンにのされ、打ち取られていた。



それは、先程監視カメラで戦況を見ていた劉備先生達により『夏侯淵軍正軍師・司馬懿、軍一般兵・尚香小喬に打ち取られたり!』との放送で、皆聞いていた。

それに「さっすが〜!」と言うものや、「ふふ、司馬殿まだまだですね……」とほくそ笑む者がいたが、今はその話しではない。



故に呂布を一人で相手にする事になったのは、不幸にもパシられていた姜維。

何故女性陣が助太刀する事もなく、声援を送るだけなのかと言うと、先程小喬のなくした『ケータイストラップ』を探す為。

彼女達はそこらへんに生えている草をブチブチ抜いてストラップを探しながらも、視界にはキッチリと呂布vs姜維を捕らえていた。



姜維「ちょっ…………何を探しているのかは分かりませんが、手伝って下さい!!」

尚香「ダメよ!だって小喬のストラップが見つからないんだもの!」

姜維「ス、ストラップって…………」

呂布「ふん!!」

姜維「うわぁ!!?」

小喬「あっ!尚香ちゃん、あそこなんか光ったよ!」

尚香「えっ!?ウソウソ?どこどこ?」

小喬「ホラあそこ〜!」



そんな感じで、女性陣は男同士の戦いにはさして興味がない様子。

姜維は姜維で防戦一方だし、呂布は呂布で無闇矢鱈に戟をブン回す。

だがしかし、カンッという音と共に、決着は付いた。

呂布が姜維の武器を弾き飛ばしたのだ。



カランカランと槍が遠くに着地し、姜維は『しまった!』と臍を噛んだ。

首元には、呂布の戟。



呂布「ふん!俺の勝ちのようだな」

姜維「クスン…………そうですね」



すると、やっぱりそれをカメラで見ていた先生達の声が、園内に響く。

『夏侯淵軍の隠し玉・呂布、軍パシリの姜維を打ち取ったり〜!』と。



姜維は「どうしよう!」と頭を抱えた。

彼の場合はは笑顔で「気にすんな!」と許しても、彼女の近衛兵達が黙ってはいまい。

だから涙目で「丞相!助けて下され!!」と、一人叫んでいた。



呂布「後は…………あの女共か」

尚香「ちょっとぉ!これ違ったわよ!」

小喬「え、ウソォ〜!?」

尚香「ウソなもんですか!見てみなさいよ!」

小喬「あ、ホントだ〜!」



しなしなと崩れ落ちる姜維には目もくれず、呂布は次のターゲットである尚香と小喬を見る。

しかし彼女達はストラップ探しに夢中で、全く気付かない。

彼はその事を気にする事なく、彼女達に近付いた。



呂布「おい」

尚香「ん?なによ?」

呂布「俺と勝負しろ」

小喬「それよりストラップ〜!!」

呂布「お、おい!!」



探し物はなんですか?とは口が裂けても言えない彼は、当然のごとくシカトされる事になる。

尚香・小喬は「何所〜?」と言いながら草の根分けてでも!と我武者らに探しているし、こうなってはどうしようもない。



そして当然、呂布は無視された事に怒りを覚える。

ブルブルと拳を震わせ、彼に背を向けて草刈りする彼女達に、彼はとうとう戟を振り上げた。

しかし、それは降ろされる事はなかった。



尚香「あ〜あ!こ〜んなか弱い女の子二人に武器振り上げるような男じゃ、いくら貂蝉でも『イヤッ!』って言うかもしれないわね〜」

呂布「っ!?」

尚香「せっかくこの戦いで良い所見せても、背を向けてる女の子に手を上げたら、あの優しい貂蝉でもさ〜」



背を見せながらの、尚香の攻撃。

その心理作戦に上手く引っ掛かった呂布は、その場でモンモンと考えはじめる。



呂布『どうする俺!?』

尚香『ふふ、引っ掛かったわね!』



心中揺さぶられる呂布に対し、尚香はそ知らぬ顔で心理攻撃を続ける。



尚香「そ・れ・に!最近貂蝉、『董卓に言い寄られてキモチ悪い〜』って言ってたわね、確か」

呂布「!?」

尚香「もし『誰か』が董卓を倒してくれたら…………貂蝉その人にメロメロになるかも」



呂布「俺は今から軍だ!!!」



それと同時に放送室を通して『呂布、軍に寝返ったり〜!』という、何とも楽しそうな劉備先生の声が全校に響いた。

まだストラップを探している小喬を見る事もせず、尚香は『してやったり』と、一人ニヤと笑った。