[決闘〜一騎討ち/1〜]






●呂布・司馬懿vs小喬・尚香・姜維●

 生き残り:呂布・小喬・尚香
 KO   :司馬懿・姜維


●ホウ統・黄忠vs孟獲・董卓●

 生き残り:ホウ統・黄忠
 KO   :董卓
 リタイア:孟獲


●甘寧・太史慈vs典韋・許チョ●

 生き残り:―――
 KO   :甘寧・典韋・許チョ(黄蓋爆弾の被害者)
 リタイア:太史慈


●陸遜・呂蒙vs曹操・関羽・大喬●

 生き残り:陸遜・呂蒙・関羽
 KO   :曹操
 救出成功:大喬


●張遼・徐晃vs孫権・周泰

 両者バトル継続中






上記のように張徐・権泰以外は、『決着』という名のエスケープやリタイア、中には放送室にリタイア申し付け候ついでに校内カメラで観戦している者までいた。

そして唯一無傷で残っているのは、もちろん各々の総大将。

と夏侯淵+その取り巻きだ。



では、カメラを大将立ちに戻してみよう。










「もうメンドイから、棍棒髭打ち取りに行こうよ」とのの声で、馬超と趙雲は『真・本陣』を散策するのを諦め、夏侯淵の待つ体育館に足を運んでいた。

走るのもダルいので、もちろんゆったりまったりと。



ふと、馬超は気になる事があった。

の『覇王』ぶりが、いつのまにかなくなっていたから。

チラッと彼女を見下ろすと、は御機嫌なのかフンフンと鼻で歌っている。





「ん〜?」

「これからが本番だが、お前それで大丈夫なのか?」

「え、何とかなるんじゃないの?」



これには趙雲も唖然としたらしく、目を丸くして見つめている。

なんて楽観的な!と注意したいらしいが、それを引き金にして先程のような『覇王』が目覚めても困るらしい。

触らぬになんとやら……である。



女性一人なら男二人がかりであれば何とも出来るのだが、相手はあの

可愛い妹。

でもちょっぴり、反抗期。

俺的には、目に入れても痛くないがな、ハハハ!!!!!!!(←兄視点)



逐一『女性たるものは……』『少しは女らしく……』などと言っていては、この生意気盛りの妹分に嫌われてしまう。

「子龍兄なんか大っ嫌い!!!」などと言われようものなら、もう生きて行けない。

そんな趙雲の懸念を感じ取ったのか、馬超は『情けないな』と思いながら、の肩に手をかけた。



「おい」

「だから何?」

「一つだけ、お前に言っておく事がある」

「なに〜?」



馬超は肩を掴んで振り向かせると、をじっと見つめて深刻な顔を作る。

もそれで何か感じたのか、ダレきった顔をキュッと引き締めた。



「良いか、

「うん」

「ここから先は、敵の巣窟だ」

「うん」

「体育館には、武器になる物が沢山ある」

「あ、バスケットボールとかバレーボールとか………バリボネットとかでしょ?」

「そうだ。倉庫の中には、武器の宝庫だ」



ここまで言うと、趙雲は彼が何を言いたいのか理解したらしい。

馬超は一つ息をすると、相棒に視線をやった。

趙雲はそれに一つ頷いて見せると、続きを述べた。



「武器の宝庫であると同時に、にとっては身を守る場所にもなる」

「え、何で?」

「なんでって…………私はに、傷付いて欲しくないからだ」

「えーーー!?でも馬ッチ達が棍棒髭をヤッてくれれば、良くない?」

「だから、殺っている間に伏兵が現れたりしたら、私はを守れる自身がないんだ」

「大丈夫だよー」

「ちょっと待て子龍!!!」



と、ここで馬超の声が響いた。

見ると、彼は『さっきの納得したような顔は、俺の間違いだったのか』と言いたげに、手をブンブン振っている。



「何だ、孟起?」

「いや…………子龍お前ちょっとこっち来い」

「ん?」



馬超は趙雲の肩に腕を回すと、に背を向け話し出した。



「お前………いくらなんでも、体育倉庫を避難場所にさせるのは………」

「そうか?私はに怪我をして欲しくない為に…………」

「馬鹿野郎!俺だってあいつには怪我させたくはないが………」

「ならば避難させておけば良いだろう?違うか?」

「子龍…………」



ここで馬超は、ガックリと肩を落として続ける。



「要するに、お前はが怪我をしなければ、何でもOKって事だよな?」

「あぁ」

「ただ、もし倉庫内に伏兵が潜んでいたら、お前どうする?責任持てるのか?」

「…………………」



何がどうなったら責任になるのかは、常人には計り得る事は出来ないが、趙雲には通じてしまったらしい。

現に彼の顔は青ざめ、唇は真紫だ。

だがキモいとか言ってはいけない。

趙雲と言えども、一人の兄なのだから。



「孟起……………私は一体どうすれば………………!!」

「まぁ落ち着け子龍」



いい加減慣れたのか、真紫から一転して黒い影を背負い始めた相棒の肩を叩き、馬超はニッと笑う。

胡散臭い勝利宣言の笑みっぽかったが、今いっぱいいっぱいの趙雲には、後光が差して見えた。



「何か策が?」

「あぁ。には、後方援護をしてもらう」

「何っ!?」

「ちょっ…………落ち着け!!体育倉庫の中の武器を使うなら、飛び道具ばっかだからあいつにだって出来るだろ?」

「ふむ……………しかし…………………」

「妙才の奴やら他の奴やらがを狙いそうになったら、俺かお前のどちらかがフォローに入れば済むだけの事だ」

「成る程…………」



ここで精神的に素面の人間がいたら、真っ先に『やめとけ』と言っただろう。

が危ない→多分馬超辺りがの助太刀に入る→残った趙雲は一人で敵兵を相手にしなきゃいけない→ボコられる。

こんな図式が頭の中で完成するからである。



だが、いつの間にか素面に戻っていたはこの話が聞こえてないし、冷静沈着と呼ばれる趙雲も、ここ最近のカミングアウトが癖になったのか、馬超の言う『策』の落とし穴に気付いていない。

まぁ、彼等はが怪我をしなければ、自分が馬鹿にされようが貶されようが『ボコ』られようが、幸せなのかもしれないが。



そんなこんなで、唯一冷静でいなくてはならない男がこんなだった為、彼等の作戦は『は後方支援』で決まった。

只一人『ニヤッ!』とほくそ笑む馬超に、気付く者はいない。



そして。



彼の提示した作戦で、またもとんでもない事が起こってしまう事も。

今この時、誰も知るはずがなかった……………………。