珍・学園無双〜外伝〜

 〜 PU RI KU RA・5 〜






新しく出来たゲーセンは、学園から近かった。

約十分程歩くと、目の前には4階建ての、ここら辺では珍しい少し高めの建物。

配色もきらびやかで、思わず人の目を引き付ける。

それにやはり新しいと人が寄るのか、表には若者が沢山たむろっていた。



「わ〜!ゲーセンにしちゃデカいよね!」

「そうだな」



ゲーセンと言う言葉だけで目を輝かせるに相槌を打ったのは、孫権。

さり気なーく彼女の横に立ち、良いポジションをキープしている。



彼は馬超や趙雲の様に『命』とまではいかないが、に惚れかけている、自称ファンだ。

そんな彼は変な威厳を漂わせながら、身長も高いせいかヤケに目立つに声をかけようとする見知らぬ男達を、近付くなと目で脅す。



はっきり言って、率いるこの軍団(趙雲・孫策・典韋・姜維・陸遜・大喬・小喬・孫権・周泰)はかなり目立っていた。

目立つと言うか、この場所で浮いているという言葉が合っているかもしれない。



デカ過ぎる典韋・周泰は当たり前だが、美形組の趙雲・姜維・陸遜、そしてヘラヘラ笑いながらも一部の隙のない孫策。

そして自身も、この日は10cmあるブーツを履いていた為今は男並みに身長が高く、その隣では彼女から『ゴツい』の称号を頂いた孫権が、周囲に目を光らせている。

果てや、かの有名な美人姉妹の大喬・小喬までも連れて歩いていれば、目立つし浮く事この上なかった。



「何かうちら浮いてない?」

「そうか?」



余りにもジロジロ見られて周りの視線が気になったのか、が隣の孫権を見る。

すると何を思ったのか、孫権は急にモジモジとし出し、顔を赤く染めた。



「………?」

が……その……」

「ん?どしたの権ちゃん?」

「き…綺麗だからでは……ないか?」

「えっ?ごめん音煩くて聞こえない……」



孫権が勇気を出して言った一言も、ゲーセンの騒音に虚しく掻き消えるのだった。










店内に入ってからは、自由行動になった。

自由行動になった途端、孫策は大喬とランデブーへ。

そして姜維と陸遜はゲーセン初心者だったらしく、目を輝かせながら「色々と見て来ます!」と走って行った。



「ぎゃっはっは!典ちゃんそれ可笑しいんだけど!」

「うっせぇ!わしぁ真面目にやってんだ!」



は趙雲・典韋と一緒に、音楽系のゲームを中心に遊びまくっていた。

音楽系、と言っても踊る事を目的としたゲームだったので、まずは「わしがやるぜ!」と典韋が台に上がる。

音楽が鳴り始めると共に、典韋はお世辞にも華麗とは言えないステップを踏み出す。

それにが大爆笑し、その横では多少元気が出たのか、趙雲が済まなそうに顔を背けながらも笑っていた。



小喬は「あたしコレやってみたかったの〜!」と言いながら、たまたま近くにあったスロットをしていたら、ビギナーズラック宜しく見事に当たってしまったらしい。

ジャラジャラと良い音を流しながら小気味良く出て来るコインを手に「キャ〜!」と嬉しそうにハシャイでいた。



それを見て、珍しく虎の本能に目覚めた孫権が「私も負けていられない!」とスロットに参戦。

その付き人周泰は、あまりゲーム自体に興味はなかったが、孫権のマジっぷりにあてられたのか百円だけ懐から出して遊び出す。

周泰はビギナーズラックというより無欲な性格が幸いしたのか、たったの百円で大当たりした。

ジャラジャラジャラジャラ。



「…………………?」



彼がコインの出て来る様子を無表情で眺めていると、その隣では本能故か千円を一気にコインに変えて頑張っていた孫権が恨めしげに見ていた。



「………………宜しければ」



そう言って孫権にジャラリとコインをたっぷりと差し出すが、彼はハッとした様に「いらん!自分で勝たねば意味がない!」と言って、その好意を拒否った。

さすがはあの父と兄を持つ次男坊。

父や兄を超える為にも負けられないらしく、千円千円また千円、と次々に夏目漱石を消費していく孫権に、周泰は『……………お労しい』と涙した。



一方。

「色々見て来ます!」と言って、早速最上階の4階から回り始めた姜維・陸遜コンビは、彼等の美貌に目が眩んだギャル系女子高生にナンパされていた。



「ねぇねぇ、君達二人?」

「えっ?えぇ……」

「ウッソ!じゃあ一緒に遊ぼうよー」

「え、ですが……」



戸惑う美少年達に、ギャル系女子高生の二人組はプッシュプッシュ!

目が『捕まえた』『もう離さない』ばりに爛々と輝いている。



「伯言殿、どうしましょう………」

「あうぅ……伯約殿……」



逆ナンされるのが始めてなのか、困る姜維と陸遜に、女子高生達は彼等の腕に腕を絡めてくる。



「申し訳ないが………」

「えー!ナニソレ!?ヒマなんでしょ?だったら良いじゃ〜ん!」

「えっと……あの…」

「ねぇねぇプリクラ撮ろうよ〜!」



攻めに攻めて来る女子高生に、さすがの彼等も防戦で手一杯である。



『丞相…………ゲームセンターとは、恐ろしい所です!!』

さん……助けて下さいぃ……』



純情青年二人は、この事件がきっかけで『ゲーセンは恐い所』とトラウマを持つ事になる。

思い思いに心で涙を流しつつ、結局彼等は引きずられながら、プリクラコーナーへと連行されるのであった。