珍・学園無双〜外伝〜
〜似たもの同士・5〜
ビリヤードでボロクソに負けた司馬懿は、どうしようもないくらいにプリプリ怒っていた。
一回戦では恥をかかされ、二回戦では勝てるとの予測に反し、のヘッポコぶりが台無しにした所為もあるかもしれない。
「も〜。司馬さん、いい加減機嫌直してよぉ!」
「黙れ凡愚め!貴様の所為で………」
「まぁ、確かにあたしの所為だけどさぁ」
「司馬殿、殿の所為にするのは宜しくありませんね」
よっぽど悔しかったのか、司馬懿がを責め立てていると、諸葛亮が間に入った。
「さんの戦力を判断出来なかったのは、どなたです?」
「…………………………ぐっ」
「さんは悪くないでしょう?」
「だ、黙れ!貴様は違うチームだろう!!」
親が子供を諭す様な口調で喋る諸葛亮に、司馬懿が喚き散らす。
「司馬さん、唾飛ばさないでよねー!」
「五月蝿い、馬鹿めが!馬鹿めがぁ!!」
自分でバカバカ言っている内に更に腹が立ってしまったのだろう。
司馬懿はもはやダダッ子ちゃんになっていた。
「まぁ!孔明様、もうこんな時間です!」
「おや?……そろそろ食事時ですね」
バブちゃん司馬懿に苦笑しながら、月英が時計を指差す。
諸葛亮も彼女の言いたい事が分かったのか、「食事に行きましょうか」と微笑んだ。
「司馬殿、殿も一緒にどうでしょう?」
「…………何がだ?」
月英が声をかけると、司馬懿が如何にも『私、不機嫌です』みたいな顔で睨み付けた。
「宜しければ食事をと………」
「あ。確かにお腹空いたかも………」
「…………言われればそうかもしれん」
が腹に手をやりポツリと呟くと、司馬懿もダダを捏ね飽きたのか、真っ暗になった空を仰ぎながら頷いた。
近場のパスタ専門店へ入った達は、取りあえずドリンクを注文し、早速乾杯をした。
何に乾杯?って感じだが、月英がとても楽しそうだったので、『今日この日に』とした。
続けて各自、メインの注文を済ます。
「あ〜美味し〜!」
「色気もへったくれもないな………」
がくぅ〜!っと親父臭くグラスを置くと、司馬懿が呆れ顔でタメ息をつく。
「ふふ、月英はカクテルが好きですね」
「孔明様もお好きでしょう?」
一方諸葛亮と月英は、さり気なくイチャこいていた。
そうして暫くダベっていると、次々と食事が運ばれて来る。
「わー!上手そ〜!」
「取ってやるから騒ぐな、馬鹿め!」
「孔明様には私が取りますね?」
「月英は優しいですね」
キャッキャとはしゃぐに悪態をつきながらも、司馬懿が彼女の分を更に盛ってやると、月英も負けじと諸葛亮の皿にパスタを盛った。
「いただきま〜す!」
「大人しく食えぬのか!」
「司馬さん一々細かいから」
「貴様っ………!!」
フォークを使ってクルクルとパスタを巻き、口に運びながら、と司馬懿が火花を散らしていると…………。
「はい!孔明様あ〜ん!」
「照れますねぇ。あ〜ん!」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
『すげーウゼー』
瞬間、と司馬懿の心は一致。
互いに暫く見つめあうと、『何事も見なかった事にしよう』とアイコンタクトを取り合い、黙って食事を黙々と口に運んだ。